第54話 「こいつが一番まともな気がする」
情報を整理してみよう。胸糞悪いけど、あの教師からの情報をもとにするしかない。
ノックルは、剣力が高くて、暴走が絶えないって言ってたな。でも、岩砕いてるの見る限り、コントロールは出来てんのかな。
近づいたら命の保証がないっていうのも、どういう意味だろう。
「あれ、シュラ。アンディー先生との話は終わったのか?」
「ビケル?」
いつの間にか、目の前にデカい男が立っていた。
15歳って言ってたけど。それにしても、デカすぎだろ。
「ちゃんと自己紹介してなかったな。ビケル・ジュゲッカだ。よろしく」
「あ、うん」
なんか、まともなやつだな。
「こんなところで何してるんだ?」
「あ、あのな。ノックルと仲良くしようとしたら、逃げられて。んで、変なじいさんが現れて。えっと」
何言ってるんだ、俺。
「ははっ。落ち着け。ノックルは、誰とも仲良くしようとしないからな。Dクラスに来る前に何かあったんだろ。変なじいさんてのは、ちょっと分からんが」
うわあ。良いやつだな。俺の支離滅裂な説明を理解してくれてるし。
「あのさ。アンディー先生が言ってたんだけど」
俺は、アンディー先生から言われたことを洗いざらい話した。俺が王子様っていうのは、除いて。
「ああ。そうだな。俺たちDクラスは、はじかれ者の集まりなんだ。先生が言ってたのも一理あるよ」
ビケルに怒っている様子は見られない。学校全体がそう思っているなら、受け入れているのかもしれない。
「でもさ、お前は多分幼くて力が足りないからDクラスにされたんだ。だから、俺たちとなんか仲良くならずに、さっさと上へ上がって行っていいんだぞ」
「嫌だね」
「え」
俺が、否定の言葉を示すとは思わなかったみたいだ。
「はじかれ者もくそもあるか。俺だってDクラスだ。みんなの仲間になりたい。そんで、Dクラスをバカにしているやつらを見返してやりたい」
「シュラ」
「もちろん、お前とも仲良くなりたいんだ。ビケル」
俺は、目の前の図体のデカい優しい人物に手を差し出した。
「ふっ。ははっ。お前、チビのくせに変わってるな。いいぜ。お前の考えに乗ってやるよ」
ビケルのデカい手が、俺の手に重なった。