第52話 「俺、怒ってます」
Dクラスにおいて教室が散らかっていることは、日常的茶飯事らしい。
「あなたたち、またですか。今日は誰が?」
俺以外の全員が1人の人物を指さす。やっぱり、中央に立ってた男か。
「ノックルは、ドアを取り付けること」
「ちっ」
ノックルが椅子から立ち上がって、ドアの方へ歩いて行く。意外に、言うことは聞くんだな。
「さて。シュラ・イレーゼル。僕がDクラス担当のアンディー・シャイン。よろしくお願いしますね」
「あ、はい」
アンディー先生は、やさ男の表現が一番似合うと思う。茶色い髪に、緑がかった瞳。細い身体を包む服から少し見える腕には、剣でできた傷跡があった。
「今日は、一日中鍛錬の日です。各々好きなことをして過ごしてください。シュラは初めてなので僕と一緒に来てください。では、解散」
鍛錬の日、なんてあるのか。
アンディー先生の言った通り、5人はばらばらに部屋を出ていった。ドアもちゃんと取り付けられている。
「シュラ。Dクラスには、特殊な子が集まっています」
特殊な子? んで、俺もその1人ってことなの?
「ノックル・ハンリ。13歳。ドアを取り付けていた男の子です。剣力は高いですが、切れやすく、暴走が絶えない問題児です。ビケル・ジュゲッカ。15歳。背の高い男の子です。彼は法力が皆無ですが相手の魔法を無効にする能力を持っており、周りから遠ざけられています」
だから、俺の魔法が無効にされてたのか。
「ホセ・エミリオ。12歳。一人、本を読んでいた男の子です。法力、剣力には全く興味ないくせに、知識は豊富で賢力のみ凄まじく高いです。そのため、教師すら近寄りがたい存在となっています。ソディー・ヤンク。10歳。眼鏡をかけた女の子です。彼女は全ての能力値が低く、自己表現もまともにできません。最後に、キャメル・マクベス。13歳。彼女は尽力が無限で不死身と言われ、気味悪がられています」
何で、急にクラスメイトの紹介始めたの? ありがたいけど、何となく、偏見が混じっているような。
「シュラ・イレーゼル。あなたは、この国の第一王子です。同じクラスだからといって、あんな劣ったやつらとつるむ必要はありません。まだ6歳だし、色んな力が未発達ということでDクラスになってしまいましたが、さっさと強くなって、上のクラスに行ってください」
なんだ、こいつ。それが言いたかったってことか。
「なるほど。Dクラスは、問題児のクラスってことですね」
「分かってくれましたか?」
「ええ。それは、あなた個人の意見ですか? それとも、この学園の総意ですか?」
「この学園の総意に決まっているでしょう。優秀な生徒のみに、価値があるんですよ」
その答えを聞いて、安心した。つぶすべき相手が大きい方が、やる気が出るってもんだ。
「十分、分かりました。この、学園がクソだってね」
「なにを」
国内最大の学校だから、さぞ良い学校なんだと思っていたら。反吐が出る。
「俺がつるむ相手は、俺が選びます。あなたの偏見に満ちた紹介なんて、興味ありません。先生、貴重なお時間ありがとうございました」
俺は、唖然としているアンディー先生を残して部屋から出ていった。
「あー。くそ、イライラすんなあ」
なんなんだ、あの教師。知りもしないくせに、落ちこぼれって決めつけやがって。
俺も、別にあいつらのことは1つも知らないけど。でも、知らないからって決めつけるのも決めつけられるのも嫌だ。
「何とか、あいつらと仲間になって、見返してやれねえかな。俺だってあの時、継がいなけりゃ、やっかい者のレッテルを貼られたまんまだったな」
俺は、転生する直前に話していた親友の顔を思い出した。