第49話 「学校に入ろう」
第5エリアの学校、メビウス学園は国内最大級の全寮制の学校だ。
入学時の試験によって、特S、S、A、B、C、Dの6つのクラスに分けられる。進級は在籍クラスと進級するクラスの教師が認めたらいつでも可能らしいが、卒業試験は一年に一回。どのクラスの者でも受かることが出来たら合格らしい。
それが、今目の前にいる試験管から聞いた話し。
「それで、君のクラスなんだけど」
試験の内容は、試験管との模擬試合と得意な魔法を見せることだった。
「君は、Dクラスだね」
一番、下かよ。
「法力は申し分ないんだけど、特の魔法が使えないんじゃ、宝の持ち腐れだねえ。しかし、特の魔法が使えないとは珍しい。剣術の方は、型はしっかりしているみたいだけど、まだまだ。その2本目の剣はいつ使うの?」
しょうがねーじゃん。特が使えないって出たんだから。2本目の剣も使えませんよ。使い方が分かりません。
そう言いたかったけど。ここでケンカ腰になってもしょうがない。王子様として特別扱いしてもらうつもりもないし。逆境から上がっていくのも、面白いじゃないか。
「失礼します。試験、終わりましたか?」
「ユアン」
試験室に、ユアンが入ってきた。
「ああ。ユアン君。君が同室だったね。頼むよ」
「はい。ほら、シュラ行くぞ」
「う、うん」
なんか、ユアン教師にすごい信頼されてね? 領主の息子だから?
「ひさしぶりだな。シュラ。約束、覚えているか?」
ユアンが、こぶしを突き出してくる。やっぱり、こいつは変わってない。
「もちろん。そのためにここに来たんだ」
俺たちのこぶしが、初めて会った時のように合わさった。
「で、クラスはなんだった?」
「D」
「え、まじで? 相変わらず苦労するなあ、お前」
なんだ、その意味深なため息は。
「ユアンは?」
「俺は、A」
「A? 何で? 入ってまだ1年くらいでしょ!」
「俺は法力がすっからかんで魔法が使えないんだ。その代わり剣術に専念できた。それを買われてAクラスになったんだ。ちなみに、俺よりもっとすごいやついるぞ。サンって、お前の知り合いだろ?」
そうか。サンもこの学校にいるんだった。
「そうだ。サン、知っているのか?」
「サンもAクラスだ。あいつは、法力も半端ないし、特の魔法も自由に操る。その上、剣でもトップレベルの腕前を持っている。多分、もうすぐSに上がるんじゃないかな」
あいつ、そんなに上に行っていたのか。相変わらずの、チートぶりだな。
「ま、お前なら大丈夫だよ」
何の根拠もない友人の言葉が、少し頼もしく感じた。
Dクラスだろうが、関係ない。俺は、ここで強くなってやる。