第48話 「父上、母上、ありがとう」
強くなるための、父上の許可は得ることが出来た。問題は、母上だ。
「父上が言ってくれるって言ってたけど」
「何考えてんのよ! あなた!」
隣の部屋から、母上の怒声が聞こえてくる。怒った母上は、父上より恐い。
「おぎゃああああ」
「ああ。よしよし。ニコラ、マーラ。良い子だから落ち着け」
母上の怒声を聞いて、2人が泣き出してしまった。
まったく。弟と妹が出来て少しは俺から関心が離れてくれると思っていたんだが。それとこれとは別問題みたいだな。
「なあ。ニコラ。マーラ。お兄ちゃんしばらく帰ってこないから、その間頼んだぞ。って言っても、分かんないか」
弟と妹は、いまだに目に涙をためて俺の方を見てくる。
少しも兄貴らしいことしてやれずに離れちゃうけど。次会ったとき俺のこと分かんないかもなあ。
「シュラ!」
「はい!」
母上が突然入ってくる。
怒声が聞こえないと思ったら、矛先が俺に向いたのか。父上が言った意味ないじゃん。
「シュラ」
「え」
怒っているのかと思ったら、母上が突然俺を抱きしめる。
「カーナ様から聞きました。もう決めたのよね」
「はい。すいません、母上」
「気を付けるのよ。あなたの帰る場所は、あなたの味方はいつもここにいるから。それを忘れないでね」
「あ」
城を出たいというのは、俺の身勝手な願いだ。それでも、その願いを受け入れ、俺の味方だとまで言ってくれた。
強くなることに反対云々の前に、子供を心配しない親はいないのかもしれない。だからこそ俺は、安心して旅立っていける。
「ありがとうございます。母上」
「シュラ。ロトが、ユアンと寮の部屋が同じになるように手配してくれた」
「本当ですか!」
ユアンも学校に行っていたのか。ありがたい。ロトさん、ありがとう。
「頑張ってこいよ」
「はい!」
俺は、退屈でない日常を手に入れるために、学校に入学した。