第47話 「それが、あいつらとの約束だから」
俺が城を出ていったことに気付いたリュンは、念のため師匠も連れて俺を探しに来ようとしたらしい。だけど、父上も心配過ぎて付いてきたんだそうだ。
リュンは、国王様が出ると面倒が増すって嘆いていたそうだけど。まあ、父上のことも気を付けなきゃいけないもんな。
でも、俺は父上も来てくれたことが嬉しかったりもする。絶対、言ってやんないけど。
「さて、シュラ」
「はい」
あれから何事もなく城に帰ってきたけど。父上、怒ってるよなあ。
「バリント国がいつできたか。知っているか?」
「え。95年前ですよね」
確か、リュンに習った。けど、何で今その質問?
「よく勉強しているじゃないか。バリント国は、俺のおじい様が作られた。当時戦乱状態だったこの国を統一してな」
それも習った。
いくつかの種族が争い合っていたところを、父上のおじい様、俺のひいじい様が力によって抑え込んだ。そしてバリント国が出来た。
「おじい様は力を持っていた。だけど、そのせいで争いが起こることを嫌っていた。だから、俺の父上には力を持たせないようにしたんだ。危険なことをさせないように。強くならないように。そして、俺もそうやって育ってきた」
ただの平和主義だと思っていた。でも、生まれた時からそんな環境だったなら、俺に強くなるなっていうのも、当然なのかもしれない。
「だから、シュラが強くなりたいって言った時、驚いたんだ。今日、分かったと思うけど、力を持つっていうのは、争いに巻き込まれることもあるってことだ。誰かを傷つけることもある。お前に、その覚悟があるのか?」
俺は、力を持つという意味を分かっていなかったかもしれない。
捕まりそうになった時、本当に死ぬかと思った。本気で怖かった。あの恐怖が、隣り合わせにあるってことなんだ。
「覚悟は、まだないかもしれません」
誰かと戦う覚悟。誰かを傷つける覚悟。自分が死ぬ覚悟。
前世で15年、転生して6年の俺には、まだ分からない。
「でも、守りたい人がいるんです。強くなると約束した友がいるんです。俺は、そのために強くなりたい」
マリアのために。ユアンやサンのために。
「自分のためだけでなく。誰かのためにか。いいだろう。その言葉を信じよう」
「え? それなら」
「シュラの思うように生きなさい。でも、王子をやめることは許さない。バリント国は、継いでもらうからな」
それでもいい。継ぐ気はないけど、強くなることを許されただけ、かなりの前進だ。
「ありがとうございます! 父上」