第45話 「俺の気持ちは変わりません」
第4エリアでは、現在ちょっとした諍いが起こっているらしい。諍いというか、名家同士のケンカが発展していったらしい。
国が出るほどのものではなく、沈静化のめどは立っているが、やはり一人娘をエリアに残しておくのは心配だったそうだ。
だから、結婚の条件にマリアを守れるようにって言ったのか。
「カーナ様。では、これで失礼いたします」
「うむ。報告ご苦労だった。頼んだぞ」
「はい」
アロンさんが帰ってしまう。俺は、まだマリアとほとんど話していないのに。
「えっと、それで、シュラ様とマリアのことなのですが」
「まだ幼いから、大丈夫だろう」
父上。マリアは忘れるかもしれませんが。俺は忘れませんからね。ただの6歳児じゃないんです。
俺は、ドアの近くにいるマリアに近づいた。
「マリア」
あ、そんな震えないでくれ。そりゃ、人見知りにとっては怖いかもしれないけど。俺は、お前の味方だから。
「マリア。必ず、強くなって迎えに行く。だから、俺のことを忘れないでくれ」
マリアが、俺をどう思っているかは分からない。でも、もし忘れないでいてくれたら、脈ありと考えてもいいだろうか。
「シュラさま。おげんきで」
マリアは、か細い声で呟いた。
オッケーなのか? 判断しづらいな。
「では、失礼します」
アロンさんとマリアは部屋から出ていってしまった。
「シュラ。その、マリアのことは」
父上の声から、困っているのが伝わってくる。
「父上。俺は本気ですよ」
「付き合う相手にとやかく言うつもりはない。だが、アロンの出した条件が」
マリアと結婚するためには、守れる男になること。それはもちろん、精神的にもだし、物理的にも強くなくてはいけないのだろう。
今が、言うときかもしれない。
「父上。俺は今、魔法と剣術の修行をしています。着実に力を身に着けています」
「なっ」
「嘘を吐いていたことは謝ります。だけど、俺はこのまま何もせずに育って国王になるのだけは嫌なんです。もっと広い世界を見てみたい。もっといろんな人と出会いたい。いろんなことを知りたい。だから、俺を第5エリアの学校に行かせてください!」
言った。言い切った。
父上。お願いだ。否定しないでくれ。
「だ、駄目だ!」
「何事です?」
父上の怒声に気付いて、リュンが部屋に入ってきた。
「駄目に決まっている。リュン! お前も知っていたのか。シュラが修行をしていることを」
「シュラ様。言ったのですか?」
リュンに矛先が向いたら、リュンがくびにされ兼ねない。
「俺が、リュンに無理やり頼んだんです。強くなりたかったから。父上。平和主義はもうやめましょう。俺は、もっと強くなりたい」
「駄目だと言っているだろう! 危険なことは禁止だ! シュラ! お前は何も気にせずに俺の跡を継げばいい」
分かってない。父上は、何にも分かろうとしていない。いつも禁止、禁止ってそればっかり。もう聞き飽きた。
「父上の分からず屋! もういいです。だから、王子なんて嫌だったんだ。王子なんて、やめてやる!」
俺は、部屋から飛び出した。