第44話 「運命の相手に出会いました」
第5エリアにある学校っていうのは、国内最大級のものらしい。別に、師匠やリュンに教えてもらうことに不満があるわけではないが、やっぱり学校でちゃんと習いたい。他の者たちと、競いたい。
ただでさえ、サンに後れを取っているのに、今日も修行がなしとは。
やる気なんて、出るはずがないよな。
「シュラ。何で、そんなふてくされているんだ。お前の望んだ通り、弟だって生まれたじゃないか」
やべ。顔に出てたか。
「いえ。すいません。何でもないです」
父上は俺の望みを何にも分かっていない。
「失礼します」
「しつれいします」
俺と父上だけだった部屋に、2人の声が響いた。
2人ってことは、また子供でも連れてきたのか?
「遅くなって申し訳ありません。カーナ様」
「よく来てくれた。アロン」
部屋に入ってきたのは、背の高い青年と小さな女の子だった。だけど女の子の方は、アロンさんの足元に隠れてほとんど見えない。
てか、アロンさん、ちょーイケメン。金色の髪の毛に金色の瞳。アロンさんが王子様でもいけるよ。これは、女の子の方も期待できるか?
「状況は変わらずか?」
「ええ。なので、1人残しておくのも心配で、娘を連れてきてしまいました。ほら、挨拶しなさい」
アロンさんが、女の子を前に押し出す。女の子は顔を下に向けまま前に出てきた。
「すいません。人見知りで」
「可愛い」
「え?」
下を向いたままでもわかる。金色のふわふわした長い髪に白い肌。あの子絶対可愛い。
俺は、椅子から降りて女の子の前まで言った。
「初めまして。俺は、バリント国第一王子、シュラ・イレーゼルです。君の名前は?」
俺は、精一杯の笑顔で話しかけた。応えてくれるか。
「は、はじめまして。マリア・ヒュートです。よろしくおねがいします」
マリアが顔を上げる。アロンさんの血を確実に受け継いだ、美しい顔立ち。まだ幼い言葉づかい。
この胸の動悸はなんだ? これが恋か? マリアから、目が離せない。
「いい子じゃないか、アロン」
父上、いい子どころじゃないよ。可愛い子だよ。
「何歳だ?」
「今年5歳です。シュラ様の1つ下ですね」
年下全然あり。
「アロンさん」
「何ですか?」
「マリアを、俺にください」
こんな可愛い子をほおっておけるわけがない。アプローチするなら、早い方がいい。俺はもう、奥手だった佐藤紡じゃないんだから。
「まさか、そう来るとは」
アロンさんが、複雑な表情を浮かべる。確かに王子様といえども、初めて出会ったやつに、大切な娘をやれるわけがないよな。
でも、俺は本気だ。本気で、マリアに運命を感じた。
「その目は、本気のようですね。そうですね。シュラ様が、マリアを守れる男になったら、あげてもいいですよ」
マリアのためなら、父上という障壁も怖くない。