第43話 「こんにちは」
サンが第5エリアに旅立って数か月。
俺の前には、今、赤ちゃんが並んでいた。
「えっと。こっちが、ニコラ。んで、こっちがマーラか」
2人も。
「かわいいから、いいけどな」
母上が産んだのは、男の子と女の子の双子だった。男の子の方が、ニコラ・イレーゼル。女の子の方が、マーラ・イレーゼル。
2人とも、金髪に青目でよく似ている。
それに、念願の弟が出来た。母上、まじでありがとう。
「早く大きくならないかなあ」
「そんな、植物じゃないんですから」
「リュン」
いつの間にか、部屋の中にリュンが入ってきていた。俺しかいないと思ったのに。
「部屋にいないと思ったら、やっぱりここでしたか」
俺は今、赤ちゃんのための部屋にいる。
「なんだよ。今日は、修行ないんだろ」
ニコラとマーラが生まれたのは昨日。母上やら2人の世話で色々決めなければいけないことがあるということで、今日の修行はなしと言ったのはリュンだった。
師匠も今日は鍛冶屋としてではなく使用人として借り出されているらしい。
暇になった俺は、誰もいないのを見計らって、弟と妹を見に来た。屋根裏に入る以上の、良い暇つぶしだ。
「明日の予定が変更になったので、伝えに来たんですよ」
明日は、通常通り修行の予定だろ?
いつかは父上を説得しなきゃいけないけど、まだ言えていない。それなら、もっと強くなるしかない。
「明日、第4エリアの領主が定時報告に来られるそうです」
定時報告?
ああ、そうか。第4エリアの領主だけ、この前来なかったな。
ん? ということは。まさか、俺も。
「もしかして、俺も参加?」
「ええ。だから、明日の修行もなしです」
会ったこともない人にこんなこと思うのも失礼だけど。
第4エリアの領主、空気読めよ。