第4話 「やってみた」
この世界は、どうやら剣と魔法の世界という、どっかのゲームからとってつけたような、典型的な異世界らしい。
その中で、バリントは世界の半分を支配している大国。もう半分は、いくつかの国。
「そら、王子様は何もしなくていいってなるわな」
俺の父上、つまり現国王も、家督を継いだだけの無能。
「あの執事がいるからもってるようなものだな。この国も」
父上、カーナ・イレーゼルの執事、リュン・メナクス。
多分、父上に代わって、この国のあれこれをやっている。
ちなみに、魔法なんてしなくていいと俺に言ったのもリュンだ。
「ところで、ここはどこなんだ」
そんな大国の書物庫。ご察しの通り、ひたすらでかい。
どの方向を向いても、天井まで伸びる本棚ばかりだ。
「魔法系の本を探しに来たはいいが。これじゃ、見つかりそうにないな」
棚の隅に座り込む。
その瞬間、目の前に本が落ちてきた。
「え?」
俺は、反射的に上を向く。そこには、何もない。
「たまたま? だよな?」
恐る恐るその本を手に取ってみる。
『魔法の基礎』
まさに、俺の探していた本だ。
「いいんだよな?」
周りを見渡しても、そこに応える者は誰もいない。
「恐れてたら何も始まらない! やってみるか! ええと、まずは?」
『魔法とは、法力を呪文によって形を変え、外界へ出すことを言います。まずは、法力を外に出す練習をしましょう。手を前に出し、ネイトと唱えてください』
「ほいほい」
本に書いてある通り、俺は手を前に出した。
「ネイト」
手の中に光の玉が集まってくる。
「おお!」
光の玉はみるみる大きくなる。
「すげえ! これこそだろ! あ、あれ?」
突然足元がふらつき、俺の意識はそこで終わった。
「やれやれ。まさか書物庫に忍び込むとは。ですが、あの光の量。これは、もしかして」