第36話 「残酷なフラグが立ちました」
今、目の前の少年は何て言った?
君も転生してる、だと?
転生?
してるよ。でも、何で言い当てることが出来る?
転生って、あの転生だよな。
いや、ちょっと待て。それよりも重要なことがある。
君も? じゃあ、お前もか?
「あ、違った? ごめん、忘れてくれる?」
いや、違わない。
その一言が、どうしてか声に出ない。
「あ、下誰もいなくなった。僕、降りるね。じゃあね、シュラ」
サンが、下へ降りるために網戸を外そうとする。
このまま、こいつと別れちゃだめだ。
「あ、ちょっと、待って。俺も、俺もなんだ」
「え? あ」
俺は思わずサンの手を掴んだ。
「あ」
俺が声出したときにはすでに遅かった。バランスを崩したサンは、そのまま下へと落下する。そして、サンを掴んでいた俺も重力に従って落下した。
ドスン!
「どうしました!」
鈍い音を聞きつけて、リュンが部屋に戻ってきた。
「って。シュラ様? サン?」
「いってぇ。あ、悪い、サン」
俺の下にサンが伸びていた。俺より先に落ちたから下敷きにしてしまったのか。
「大丈夫か? っと」
サンに手を差し伸べようとした俺は、ふらついて胸を触った。
「あれ? 柔らかい?」
触った、というより、掴んだ。
掴める? ということは、胸がある? え? 胸があるって。
バシン!
右頬に鋭い痛みが走る。とっさのことすぎて、避けられなかった。
「バカ!」
サンは、俺の下から抜け出して部屋から出て行った。
「シュラ様。サンは、女の子です」
リュンの呆れた一言よりも、手の中の柔らかい感触が俺の心を占めていた。