第32話 「転生する前から勉強は嫌いなんだ」
1週間というのは、経つのが早い。
師匠の言うとおり、ネイトは使えるようになったし。色んな魔法も覚えてきたし。
「シュラ様。なんか、嬉しそうですね」
「そりゃ、やっと剣術を教えてもらえるんだ。楽しみに決まってる」
リュンは、相変わらず感情の欠片もない言葉を投げかけてくる。
「学術もこのくらいやる気を出してくれると有難いのですが」
リュンの辛辣な言葉に、返す言葉が見当たらなかった。現に、俺の賢力はユアンに指摘された時からほとんど伸びていない。
いや、やる気がないわけではない。この世界のことを知れるのは楽しい。でもさ、魔法と並行してやっているわけだし。そうなると、やっぱり魔法の方に力を注いで、学術は疎かになってしまう。
「まあ、今は興味のあることから吸収していけばいいでしょう。まだ学術は間に合いますから」
意外に、寛容だな。
「あなたが5歳だから言っているんですよ。力が欲しいと言った以上、賢力を上げることは避けられませんからね。いつまで経ってもやる気を出さないようなら、さすがに私にも考えがありますが」
リュンの言葉に、寒気がした。こいつは、本気だな。
「ちゃんと、学術の方も頑張ります」
俺は、その言葉を返すしかなかった。
でも、今は剣術だ。師匠の言うとおり1週間待ったんだ。やっと俺の剣が手に入る。
「シュラ様。着きましたよ」
俺は盛大な期待を持って、師匠のいる部屋の扉を開けた。