第3話 「確かに非日常を望んだけども」
再度、あいつの言っていた言葉を思い出す。
俺の望むものは非日常。
確かに、そう望んださ。でも、それは退屈な日常から逃れるためだ。
なのに。なのに。
「生まれたのが王子様なんて、面白くないだろー!」
俺の叫びが、広い部屋の中でこだまする。
防音設備がされているから、外に漏れる心配はない。
「異世界転生っていうのは、もっとさあ。こう魔法や剣術を身につけたり。冒険に出かけたり。欲しいものを探しに行ったり。苦難があってこそだろ!」
俺の転生先は、王国バリントの第一王子、シュラ・イレーゼル。
金色の髪に青いくりっとした目。俺は、見事に王子様だった。
「一応、魔法の概念はあるらしいが。シュラ様にはそんなもの必要ありませんの一点張りだったからなあ」
ただいまの年齢、5歳。
え? 5年間何してたかって?
もちろん、ただ遊んでいたわけじゃない。
5歳くらいになれば魔法くらい教えてくれるかなっていう淡い期待を込めて、体力はつけていた。何事も、体力が必要だからな。
まあ、その淡い期待は打ちのめされたのだが。
「いや。希望は捨ててはいけない。せっかく転生できたんだ。魔法なんて、使ってみたいじゃないか」
というわけで、俺は今、書物庫に忍び込んでます。