第29話 「また会おう」
俺とユアンが外に出ている間に、父上とロトさんの話し合いは終わったらしい。
「ユアン。そろそろ帰るぞ」
「父さん、ちょっと待って」
ユアンは、ロトさんを置いて、俺の方へ戻ってくる。
「シュラ。お前が力を持っていることは内緒にしといてやるよ。だから、何で隠しているのか教えてくれないか」
ユアンは、父上に聞こえない声で言った。
本当に、聡いやつだ。こいつになら、話してもいいかもしれない。
「父上は、俺が強くなることに反対しているんだ。だから、父上たちに内緒で、リュンに修行をつけてもらっている」
「何で、お前はそこまでして強くなりたいんだ?」
「ユアンが権力を嫌うように、俺は権力に興味がない。俺の望むものは、退屈でない日常だからな」
ここまでなら、ユアンに話しても支障はないだろう。さすがに転生したからとかは話せないけど。
「俺が言うのもなんだが、子供っぽくない子供だな」
確かにユアンには言われたくない。
「だけど、面白い。俺もお前の力になってやるよ」
ユアンは、口元に弧を描き、こぶしを突き出してくる。
俺はユアンの行動の意味が分かり、同じようにこぶしを突き出した。
「頼りにしてるよ。ユアン・メイスン」
俺たちのこぶしが、軽く合わさる。
「じゃあな、シュラ・イレーゼル。また会おう」
俺の初めての友達とも言える存在は、予言めいたことを言い残して帰って行った。