第27話 「敵か、味方か」
力のバラメーターは、クリアを使わないと見れない。リュンはそう言っていた。
「おい」
だから、ユアンが俺の賢力や体力を知るはずがない。
「おい」
なのに、こいつは当てやがった。なんで分かったんだ。
「おいってば! 王子様!」
「はい!」
思わず返事をしてしまった。ユアンの方を向くと、ロトさんによく似た端正な顔立ちに仏頂面を浮かべていた。
「いい加減、手を離してくれ。王子様」
「あ、ああ。悪かった」
俺は掴んでいた手を離した。
「何のつもりだ? こんな所に連れてきて」
部屋を出て歩いてきたのは、城の端にある空中庭園。その名の通り、外に浮かんでいる庭園だ。外と内を遮るものは何もない。城を案内するからと言って、来る場所ではない。
部屋を出て真っ直ぐ歩くと、偶然ここに着いたのだ。
「そっちこそ。何で俺の力が分かったんだ」
「ああ。俺は、魔法を使わなくても人のバラメーターを見ることが出来るんだ。世間知らずのお坊ちゃまだと思っていたが、意外に賢いんだな。王子様」
ユアンは、皮肉な笑みを浮かべる。
まさか、そんな能力を持った者がいるとは。リュンは何も言わなかった。ということは、メジャーな能力ではないのか。
「その、王子様っていうのは止めてくれないか。俺の名前は、シュラ・イレーゼルだ」
「やだね。俺は、権力を持ったやつが嫌いなんだ。その代表である王家もな。だからお前と仲良くする気もないし、名前で呼ぶ気もない」
「お前の家だって、権力を持っているじゃないか。領主だろう?」
王家ほどでないにしても、領主も権力を持っている。そのエリアの統括を任せられているのだから。
「ああ。だから俺は俺の家も嫌いだ。まあ、三男だから継ぐことないけどな。それより、部屋に戻るぞ。俺はお前なんかと話すことは何もない」
ユアンは身を翻して、部屋へ足を向ける。
「あ、おい。待てよ」
俺は思わずユアンの手を掴む。
「離せって!」
ユアンが振り返って手を振った。だけど俺は離さなかった。
予想外の俺の行動にユアンはバランスを崩す。
「あ」
ユアンが足を踏む外し、空中へ投げ出される。
「ユアン!」
「バカ! 手を離せ」
「嫌だ!」
ユアンに引っ張られる形で、俺の身体も空中へと舞った。