第25話 「魔法って、楽しいな」
王子として生まれたことといい。特が使えないことといい。俺を転生させたやつは、本当に俺の望みを叶える気があったのか?
「あの、落ち込んでいる所悪いですが、そんなに落ち込みます?」
こいつ絶対悪いと思っていない。
「だって、特が使えないんだぞ。面白くないだろ」
「面白いとか、関係ないでしょう。それに、特が使えないってことは、逆を言えば、全ての種類の魔法が使えるということですよ」
「あ」
確かに。特以外は使えるのか。特は既存の魔法を組み合わせることだから、既存の魔法は全種類使える。
いや、でも。
「やっぱり、面白くないよなあ」
俺の言葉に、リュンは頭を抱えた。
「言っておきますが、特以外の魔法を扱えるようになるのも、練習が必要ですよ。それぞれの属性には、レベル1からレベル3、そして最上級に賢者級という魔法が存在します」
「賢者級?」
「ええ。私はレベル3までの魔法しか使えないので詳しくは知りませんが。何でも、然の賢者級魔法は、天候を操るとか」
すげぇ!
「なにそれ! 教えて」
「全く、すぐ機嫌が直りますね。さっきも言いましたが、魔法はレベル1から存在します。賢者級まで出来るようになるには、すさまじい量の勉強と練習が必要になるんです。シュラ様はまず、レベル1の魔法から出来るようにならないといけませんね」
特が使えなくても、全ての属性の魔法が使えるようになれればいいか。賢者級とかいう、すごい魔法も存在するみたいだし。
「教えてくれ! リュン」
「では、さっそく然のレベル1からやっていきましょうか。然のレベル1は、手で自然のエレメントを操ることです。例えば、ウォール」
リュンの手の中に水の玉が浮かぶ。俺が、散々濡らされたやつか。
「ウォール」
俺の手の中に、簡単に水の玉が浮かぶ。
「おお。出来た」
「水を浮かばして終わりではありませんよ。それを手の中で動かすんです」
「動かす?」
動かすってどうやるんだ?
「イメージです。動かしたいイメージ」
リュンに言われた通り、手の中で動く水をイメージする。
「動いた!」
「イメージは、得意なんですね」
これ、意外に簡単に出来るな。イメージで動くってことは、もしかして。
水が手を離れることをイメージする。水はイメージ通り、俺の手を離れて中を回り、前方へと飛んで途中で離れた。
「やっぱり」
イメージは、上手くいく。
「シュラ様。どうしてそれを」
リュンの声に変な気配を感じて、リュンの方を見る。リュンは、驚いた顔で俺を見ていた。
「え?」
「手を離れて見える範囲で動かすのはレベル2の魔法です」
「でも、イメージしたら出来たぞ」
「イメージだけで出来るものではないんですよ。動かすにはさらに法力を加える必要がありますから。もしかして法力がありえない程多いから、自然と追加されて?」
疑問形で終わられても。
てか、今のレベル2だったのか。
「ん? ということは、レベル1が出来たら法力を追加するだけでレベル2は出来るってこと?」
「そういうことです。然、無、人のレベル1は、自分の手が届く範囲で操ること。レベル2は、自分の身体から離れた見える範囲で操ることです。法力を上手く追加するのも練習が必要なのですが。この際、何で自然と法力が追加されたのかは置いておきましょうか」
まあ、聞かれても説明できないからな。
「あれ? 生は?」
「生のレベル1は自分より小さいものを生み出すこと。レベル2は自分と同等の大きさのものを生み出すこと。レベル3は自分より大きなものを生み出すこと。そもそも、存在するものを操る他の属性と違い、生は違う練習が必要です。なので、先に然、無、人のレベル2までの魔法を練習しましょう。魔法は、たくさん種類がありますからね。エマージ」
リュンの手の中に、1冊の本が現れる。俺は、その本に見覚えがあった。
「それって」
「ええ。『魔法の基礎』です。これにある程度の魔法は載っています。魔法はその名前、特性を知ることで使えるようになるので、これで勉強しましょう」
リュンが、俺の手に本を載せる。それを初めて手にした時よりも、少し特別な感じがした。