第23話 「アレって何ですか」
前方に、使用人2人。このまま真っ直ぐ行けばゴールだったのに。
左に入ってやり過ごすか?
いや、左は行き止まり。リュンの攻撃があった場合は避けられない。右だな。
「まだまだ、甘いですね」
「げっ。リュン」
後ろにいると思っていたリュンが、目の前に現れる。何でもありか。こいつ。
「ウォール」
リュンは、手加減もせずに俺に水をぶっかけてきた。
「もう少しでゴールだったのに。何で、こんなことに」
冷たい水を浴びながら、リュンの言葉を思い出していた。
「第1回城内鬼ごっこです」
俺の疑問に、リュンは不気味なテンションで応えた。
「は?」
鬼ごっこ?
しかも第1回って。何で何気に続く想定なんだよ。
「あ。バカにしてますね?」
「そりゃ、するだろ」
「言っておきますがただの鬼ごっこではありませんよ。スタートは、ここ。1階の私の部屋。そしてゴールは、3階の端にあるシュラ様の部屋。私が追いかけるので、シュラ様が逃げてください」
聞いている限り、ただの鬼ごっこだ。
「ルールは、2つ。1つ目。誰にも見つからないこと。2つ目。私の攻撃に当たらないこと」
「え。攻撃するの? しかも、誰にも見つからないって。城内にどれだけ人がいると思っているんだよ」
城内で暮らしているのは、王族だけではない。城の仕事に携わる者も部屋を持っている。俺も全ての人数を把握しているわけではないが、100人以上はいるだろう。
「大丈夫です。今は中休みの時間ですから、ルート上で働いている者はそんなにいないはずです。隠れる場所も多いですし。それに攻撃と言っても、水をぶっかけるくらいです。安心してください」
水をぶっかけられることの、どこに安心すればいいんだ。
「このゲームの目的は、2つ以上のことを考えながら行動できるようになることです。シュラ様がネイトができるようになるまでやりますからね」
確かに、見つからないよう気を付けながら、リュンから逃げるって相当頭使うな。
でもこれでネイトができるようにならなかったら、こんなバカみたいなこと何回もさせられるのか。
「理解はできましたね? では、実践あるのみです。よーい、スタート」
こうして半ば強制的に、第1回城内鬼ごっこは幕を開けた。