第21話 「俺の明日の予定は?」
ネイトが子育てみたいって、なんだよ。俺、子育てしたことないから分かんないけど。魔法と通じるものなのか?
兄貴しかいなかったからなあ。弟か妹欲しかったな。
あ、父上たちに頼んだ弟の件どうなったかな。
「シュラ様? シュラ様。聞いてますか?」
「うわっ」
気づいたら、目の前にリュンの顔があった。別にこいつの顔がブサイクとかではないが、大の男の顔のアップほど気持ち悪いものはない。
「なんだよ」
「なんだよ、はこっちのセリフですよ。話し聞いてましたか?」
リュンの言葉で、今の状況を思い出す。
「ああ。ごめん。何だっけ?」
「だから、明日は各地のバリント国領を統括している領主たちが集まる日ですから、シュラ様も国王様と一緒にいなければいけませんよ」
「ああ。朝、父上から聞いたよ」
せっかく、今日の修行をするためにリュンの部屋に来たのに。一番にこの話しだよ。
「国王様にばれないのはもちろんですが、領主たちにも修行していることは極力ばれないようにしてくださいね」
「ばれないも何も、領主たちが用事あるのは父上だろう? 俺はいたとしても、話すことはないだろ」
「だといいんですがね」
なんだ、このリュンの心配のしようは。
俺は、領主たちに会ったことはない。でも別に領主だからといって、特別なことはないだろ。父上に各地の自治を任されているだけだろ?
「でもさ。それなら、明日の修行はなしか?」
「そうなりますね。国王様も明日の仕事は領主たちと会うことだけですし、時間の許す限りはシュラ様と一緒にいたいのではないですか?」
息子の俺が言うのも変だが、父上と母上の親バカぶりは、国内でも有名である。強くなることに反対しないなら、良い親なんだけどな。
「だから、今日中にネイトはできるようになっておきましょうか。言いましたよね? ビシバシ行くと」
「ああ」
リュンの張り切り具合には不安はあるが、提案そのものに異論はなかった。
「では、今日の修行を始めましょうか」