第2話 「こんなに嬉しいことはありますか」
「は?」
目の前には、ただっ広い空間。
周りを見渡しても何もない。
空間の果ても見えない。
「な、何だここ。継!」
俺の声は反響さえしなかった。
「えー。佐藤紡さん、ですね」
突然、頭上から声が聞こえた。
「ああ、そんなにきょろきょろしても無駄ですよ。私の姿は見えないようにしてありますから」
あっちからは丸見えということか。気持ち悪い。
「誰だよ。お前」
「あれ? そんな口の利き方でいいんですか? 今からあなたの望むものをプレゼントしてあげようとしているのに」
「俺の望むもの?」
俺の望むものってなんだ?
新しいゲーム?
漫画?
「あなたは、非日常を望んでいましたね。こんなにも非日常を望む者は、こちらにとっても初めてでしたので。それなら、転生させてみたらどうかと」
「それって、もしかして!」
転生って、二次元でよくある。
「ええ。異世界転生です。佐藤紡さん。15歳。独身。間違いありませんね」
「あ、ああ! まじか? 異世界転生できるのか?」
願ってもないことだ。これで、退屈な日常に戻らなくて済む。
「ええ。というわけで、行ってらっしゃーい」
再び、俺の視界は暗転した。