第17話 「剣を造るのは大変なんだな」
「さて、剣術に大事なものは何か分かるか? シュラ」
剣術に大事なもの?
「力? ですか?」
「ん。いや、まあ、そうなんだが。力よりも大事なものだ」
力よりも大事なものってなんだ?
「答えは」
俺が頭を働かせていると、師匠がしびれを切らした。
「剣だ」
そりゃそうだ。
あまりにも、当たり前すぎて何も言えなかった。
「あ、お前バカにしてるだろ。剣というのは、ただの道具ではない。使う者の心が宿った武器だ」
「どういうことです?」
「人は誰しも剣心というものを持っている。俺にも、お前にも。剣術に向かないリュンにも。その剣心を見極め、そいつに合った、そいつだけの剣を造る。それが、刀鍛冶だ」
「俺の、剣心」
つまり、一人一人に合った剣を造るのが師匠の仕事ということか。
「そうだ。俺がお前に合った剣を造ってやる。剣術を教えるのはそれからだな」
「それって、どのくらいかかるんですか?」
「そうだな。1週間くらいだな」
「え?」
剣を造るのにそんなにかかるとは思わなかった。
「また1週間後に来い。それまでには、ネイトくらい使えるようになっとけよ」
師匠が、笑いながら俺の頭を撫でる。
なんで師匠が、俺がネイト使えないことを知っているんだ。俺は、思わずリュンの方を向いた。
リュンは俺の言いたいことを察して、首を横に振る。
「なんで、そのことを」
「俺が、お前の師匠だからさ」
俺は、そのうさんくさい言い訳を信じるしかなかった。