第14話 「シークはどこにいるんだ?」
この国には、軍隊がある。とはいっても、戦う敵がいるわけではない。
国軍の仕事は国の治安を守ることだ。
「現在の軍隊長は、ミッヘル・モルクス。会ったことはありますね?」
俺は、無言で首を縦に振った。
5歳の誕生日パーティで挨拶したのを覚えている。
茶色い短髪に、血のように赤い瞳を俺に向けていた。
何の感情も読み取れないその瞳に、無性に寒気がした気がする。
「元々は、シークが隊長の時、ミッヘルは副隊長でした。しかし、シークのある癖が問題となり、シークは軍隊長を止めることを余儀なくされました。それを問題にしたのが、ミッヘルです」
「ミッヘルは、シークにとって恨むべき相手ってこと?」
「まあ、シークが恨んでいるかは知りません。何だかんだ言って、今の生活を楽しんでますからね。しかし、ミッヘルのせいで、こんな辺鄙な所に住まされることになったのは事実です」
バリント国城には、地下に水路が通っている。非常時に、避難するためのものだ。水路の存在は、城に住む者にしか教えられていない。
そして、俺は今、リュンに連れられてそこを歩いていた。
人が通れるように舗装されているとは言え、ジメジメして薄暗いし、臭いし。長居はしたくない場所だ。
「他に、場所はなかったのか?」
「軍に属する者の城内部の配置を決めるのは、軍隊長の仕事ですから。シークは腕があったので刀鍛冶を頼まれてますが、一応軍に属する者です」
「なるほどなあ」
水路に降りて、10分ほど経つ。まだシークのいる場所には着かないのか。
「シュラ様。見えてきましたよ」
リュンの指す方に、扉があるのが見えた。
「そういえば、問題になった癖って」
「会えば分かります」
リュンは嫌そうな顔に、呆れた雰囲気を混ぜながら、目の前の扉を開けた。