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転生初期からイージーモード・少年期  作者: きと
特別編 それぞれの事情
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第127話 ビケルの事情

 ビケルの実家は、第4エリアにある。争いをしている2つの名家の内の1つであり、ジュゲッカ家の長男として育った。


「はあ」


 第一回クラス対抗大合戦から一週間。学校は大幅改革のため休みとなっていた。

 その休みを利用して帰郷したビケルの表情は浮かない。通常であれば、休みだからと言って帰ってくるわけではないからだ。


「やっぱり、やめようかな」


 家の門前でビケルは頭を悩ませる。


「ビケル坊ちゃん!」


 ビケルが諦めて踵を返そうとした時、門の中から壮年の男性が出て来た。


「シャカンさん」


「お帰りなさい。ビケル坊ちゃん。帰ってこられるのを待っておりましたよ」


 ジュゲッカ家の執事であり、子どもたちの世話係でもあるシャカン・アールは、嬉しそうな顔でビケルを家に連れ込んだ。


「シャカンさん。俺は別にゆっくりするつもりは…」


「まあまあ、そうおっしゃらずに」


「ビケル」


 家の奥から男性の声が聞こえた途端、ビケルの身体が震える。


「お父様」


 ビケルは緊張した面持ちで男性の方を向いた。


「何だ、いまさら。帰ってきて。落ちこぼれが学校に行って、何か学べたのか?」


 ビケルは法力がない上に、周りの魔法を無効化してしまう。何のメリットも持たないその能力は、ジュゲッカ家にとって恥であり、ビケルの父親からの扱いは厳しいものだった。


「いいえ。俺はまだ勉強中です。ですが、一言言いたいことがあって参りました」


 ビケルは幼いころから父親が苦手だった。何をしても認めてくれない。それは自分の能力のせいだと思っていた。誰も、受け入れてくれないと思い込んでいた。


 だけど、シュラは違った。法力が皆無でも、周りの能力を無効化してしまっても、ビケルと仲間になりたいと言ってくれた。そして、そのことを本当の意味で気が付かせてくれたのは、サックスの言葉だった。


「なんだ」


「俺は、自分の能力を恨んでいました。そしてその能力を受け入れてくれない周りを恨んでいました。でも、一番自分の能力を受け入れていないのは俺でした。学校で、仲間になってくれたやつがいます。俺自身を受け入れてくれたやつがいます。だから、俺は俺の能力を活かせる場所を探します。それが、俺の生きる意味になると思うから。こんな長男で、ごめんなさい。家は弟たちに継がせて構いません。お父様たちが俺を受け入れてくれなくても構いません。でも俺はもう、俺から逃げるのをやめようと思います」


 ビケルは父親から目を逸らすことはなかった。


「少しは、成長したようだな」


「え?」


 父親はビケルに背を向ける。


「誰がこの家を継ぐかは、私が決める。ビケル、学校で色んなことを学んで来い。ジュゲッカ家の名に恥じぬようにな」


 その言葉の意味を、ビケルは正確に理解した。


「は、はい! ありがとうございます。お父様!」


 ビケルは少しだけ自分に自信を持てた気がした。


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