表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生初期からイージーモード・少年期  作者: きと
特別編 それぞれの事情
128/132

第125話 ノックルの事情

 メビウス学園のDクラスは、通常時は開講されない。何かの問題を起こした生徒がいた場合のみ、問題児クラスとしてDクラスが作られる。3年前、ノックル・ハンリが問題児としてDクラスに落ちた時、彼は唯一のDクラスの生徒となった。


「はあ」


 ノックルは、授業が終わった夕方、メビウス学園の北にある丘に来ていた。周りは、旧校舎など使われていない建物のみで、静かな空気の中、ノックルは寝転がって空を見ていた。


「相変わらず、ここが好きなんだな」


「アンディー兄ちゃん!」


 ノックルの視界の真ん中に、アンディーの顔が現れる。


 ノックルがアンディーを傷つけて以来、2人が話すことはなかった。それは、第1回クラス対抗大合戦が終わっても同じことだった。


「久しぶりだな。元気にしてるか?」


 元々、アンディーは学術の先生だ。クラスのくくりがなくなった現在、2人が会うことは少ない。


「え、う、うん」


 アンディーがノックルの隣に腰を下ろしたのを見て、ノックルは上半身を起こした。


「あの……。アンディー兄ちゃん。何で……」


「あのチビが、私たちに言ったのよ」


 ノックルは後方から聞こえてきた声に驚いた顔で振り返った。


「ケイト姉ちゃん!」


 ケイトはアンディーの反対側の、ノックルの隣に座った。


「ケイト。お前、相変わらず口が悪いな。彼は嫌がっているらしいが、王子様なんだ。ちゃんと名前で呼びなさい」


 どうやら、ケイトの言うチビとは、シュラのことらしい。だとしても、ノックルに2人から話しかけられる理由は見当たらなかった。


「本人が嫌がっているならいいじゃないの」


「いや、チビも嫌だと思うが……」


 ケイトとアンディーが言い争いを始めて、話しは一向に進まない。


「あの! アンディー兄ちゃんも、ケイト姉ちゃんも、何でここに?」


「ああ。ノックルと話しに来たんだ」


「俺と……?」


 ノックルは動揺が隠せない。2人は自分を恨んでいたはずだ。


「あのチビがね。ノックルがコナーで、剣力が高すぎて暴走が抑えきれないと話しに来たのよ」


「それ! 理解できたの?」


 コナーになる前に知り合った人にコナーであることを話しても、覚えることは出来ないはずだ。だから、ノックルは人を避けて生きてきた。それを全て話し、受け止めてくれたのは、シュラだけだった。


「ああ。ノックルから聞いても忘れるということも聞いた。おそらく、人づてに聞いたなら、大丈夫なんじゃないのか?」


「だから、私たちも言いに来たのよ」


「え……?」


 アンディーの手が、優しくノックルの頭に触れる。


「悪かったな。ノックル。お前だけを責めていた。暴走も抑えきれない問題児だと。でも、シュラに怒られて気づいたんだ。お前を信じてやらなければいけなかったんだって」


「悪かったわね。ノックル」


「アンディー兄ちゃん、ケイト姉ちゃん……」


 シュラがこの2人に言ったのは、シュラ個人の判断だ。ノックルは頼んでいない。だから勝手に言ったことを怒ることも出来る。しかし、シュラの判断の結果に、ノックルは怒る気はしなかった。


「俺も……。俺も、傷つけてごめん。ちゃんと謝りたかった。痛かったよね。ごめんね」


 ノックルの目から、涙が溢れてくる。それを見て、2人は苦笑した。


「泣き虫だな、ノックルは」


「そんな強面の顔で泣いても、恐いだけよ。いい加減、泣き止みなさいよ」


「う、うん……」


 3人のそばを、優しい風が吹き抜けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ