第124話 「これが見たかった」
「今日の授業はこれで終わりだ。解散」
先生の言葉に、持っていた剣をしまう。
「シュラ。お前、今日の授業はもう終わりか?」
「ん。ああ。そうだけど、ユアンも?」
第1回クラス対抗大合戦から1か月。この学校は、変わった。
「ああ。俺は、そもそも法術を取ってないし。授業は少ないからな」
まず、クラスの区切りがなくなった。授業は、それぞれの取りたいものを取る。時間割も自分で作る。
俺は行ったことないけど、大学の授業みたいな感じだ。
「ユアン! シュラ! 何、話してるんだ?」
「あ、サン。ちょうど良かった。お前にも話があったんだ」
「なに?」
「お前も、今日はもう授業終わりか?」
俺とサンは剣術以外にも全ての授業を取ってるけど、法力が皆無なユアンは法術の授業を取っていない。
ちなみに、授業数も好きに取れる。俺は、学術の授業が少ない。リュンに知られたら怒られそうだけど。
「そうだけど。何で?」
「父さんがシュラとサンに用事があるんだってさ。学校終わったら連れてこいって」
「ロトさんが? なんだろう」
「あれ。シュラ君とユアン君。それに、君は元Sクラスのサン君だったね」
「サックス。久しぶりだな」
ユアンがサックスの姿に気づいたのと同時に、俺たちもサックスの方を向いた。サックスの後ろには、ホセとカディがいる。
「だってユアン君。法術全然取ってないじゃないか」
「剣術をほとんど取っていないお前に言われたくないけどな」
正反対の戦術を持つ2人は会う機会が全くない。
「王子様。良かったですね。あなたの望んでいた結果になって」
ホセは相変わらず王子様と呼んでくるけど、俺の望みをよく分かってる。
第1回クラス対抗大合戦の優勝は、特Sクラス。でも、大会の後に言ったサックスの言葉に全員は耳を疑った。
『第1回クラス対抗大合戦の優勝者は特Sクラス! 特Sクラス総長サックス。挨拶をお願いします』
『優勝したのは、僕たち特Sクラスだ。でも、この大会で一番力を発揮したのはDクラスだろう』
会場にいた全員が納得しているようには見えなかった。でも、サックスの言葉に異論を唱えるものもいなかった。
『理事長。あなたの考えていることは僕と一緒でしょう。クラスという区切りをなくしませんか?』
理事長に聞かれたその問いは、しかし全員に問いかけられていた。
俺が望んでいたのはDクラスが認められること。でも、その先があるなんて思わなかった。俺も気付かなかった俺の望みを、サックスが叶えてくれた。
「王子様? 何をボーっとしてるんです?」
「あ、いや。何でもない。それにしても、お前ら。いつの間にそんなに仲良くなったんだ?」
ホセとカディもそうだが。サックスも。こいつら大会の時はわだかまりしかなかったはずだけど。
「それは、まあ。1か月も一緒にいたらね。まあ、まだまだこれからの人たちもいるでしょうけど」
ホセの視線の先には、ケイトと言い争っているキャメルがいた。その傍では、ソディが心配そうな顔で見ている。
変わらないな。あいつらは。だけど、クラスの区切りがなくなったことでいい方向に変わっているのは確かだ。
「おい! シュラ。そろそろ行くぞ」
「ああ! すぐ行く! またな、ホセ」
「ええ。また、会いましょう」
俺は、ユアンとサンが待つ方へと駆けて行った。