第121話 「ラルクの顔が気になります」
この空気、どうすっかな。
カディーもホセもお互いの気持ちを理解したところで、口を閉ざしている。あっちのホセの周りには人がたくさんいるんだろうけど、ここには俺しかいない。ぶっちゃけ、この空気を変えるのは俺には荷が重すぎるんだが。
「あれ? あなたは確か、シュラ」
前方から歩いてきた1組の男女と対面した。
「お前は、確かラルク?」
Cの総長だよな? サックスが名前を言っていた気がする。てことは、隣の女もCクラスか。
「ええ。俺の名前は、ラルク・アンブレ。まさか、先を越されているとは」
ラルクは、頭をかく。困った顔をしていそうな口ぶりだけど、何せ髪の毛で顔が見えない。
「でも、あっち、まだ、見つけてない、と思う」
変な区切りをつけながら、隣の女が口を開いた。始終無表情の何を考えているか分からない顔で、俺たちを見ている。
ていうか、こいつらは一体何の話をしているんだ?
「そうですね。てことは、俺たちにもチャンスが……」
「あ、シュラ君」
「サックス。ビケルも!」
後ろから見慣れた声がして振り返ってみると、サックスとビケルがいた。この2人、一緒だったのか。
「サックスさん」
ラルクのテンションが上がった、気がする。顔が見えないから何とも言えないが。雰囲気が。
「ラルク君じゃないか。君がここにいるということは、この辺りに魔法玉があるってことだね」
サックスは、疑問でもなんでもなく、断言した。そういえば、Cが最初に魔法玉を見つけた時も納得してた気がする。
「サックスさんには、隠し事が通用しませんからね。その通りです」
「おい。どういうことだよ」
状況が全く分からない。
「シュラ君。ラルク君は探索系魔法のスペシャリストなんだ。どんなものでも、色んな魔法を駆使して見つけだしてしまう」
特魔法で探索系に特化したということか。やっぱり、いいな。特魔法。
「じゃあ、ここにも魔法玉が?」
急いで辺りを見渡す。が、俺の目に魔法玉は見つからない。
「それで? どこにあるんだい? 僕に譲ってくれるよね?」
サックスは当然のように提案する。そんなの、譲るわけ。
「いいですよ」
ラルクはあっさりと受け入れた。何なんだよ、こいつらの関係は。主従関係でも結んでんの?
ラルクは木のふもとまで歩き、手で土を掘り始めた。何をしているのか分かんないけど、大人しく見守る。
「サックスさん」
サックスが呼ばれてラルクの元まで行く。俺もサックスの後ろから状況を覗いてみた。
「魔法玉!」
土の中には、10ポイントの魔法玉が埋まっていた。
本当にあるとは。
サックスがそれに触ると、魔法玉は空気に溶け込んでいった。
『特Sクラス、10ポイントゲットです。ここで、終了時間まで30分になってきました。みなさん、頑張ってください!』
「ちょ、何で、ラルクはすんなりサックスにポイント渡してるんだよ! 10ポイントだったからってわけじゃねえよな」
仮に見つける前からポイント数が分かっていたとしても、10ポイントは決していらない得点ではない。何より、特Sはリードしているんだから。
「ラルク君は、僕の言うことしか聞かないように造られているからね」
サックスの怪しげな言葉が、俺の心を戸惑わせた。