第118話 「2人っきりっていうことですか」
「………」
なんか、めっちゃ視線を感じる。
「……」
視界は真っ暗だけど、手は動く。足も動かせる。てことは、森に帰ってきたのか?
俺は、恐る恐る目を開けた。
「うわっ」
目の前に、狐の面が現れる。焦って、そいつと距離を取った。
「カーク! お前、何しようとして」
俺の顔の目前に待機していたカークは、相変わらず読めない表情で俺を見つめている。
『中々目を覚まさないから、心配になって』
俺の頭の中に、無機質な声が響いてきた。周りを見渡すが、カークしかいない。だけど、今のは喋ったというより、伝わった?
「今のカーク?」
カークは無言で首を縦に振る。
「お前、話せないの? これ、魔法?」
カークは再度、首を振った。
言葉を伝えるってことは、人魔法かな?
それより、カークに動転して周りが見えてなかったけど、ここはどこだ。他のやつらはどこに行ったんだ? あの後、どうなったんだ?
「カーク。他のやつらを知らないか?」
『知らない。目が覚めた時には、君しかいなかった』
やっぱり、あの魔法玉が原因か。
『えー。特S、S、Dが魔法玉に飛ばされた件について、全員が目を覚ましたので解説します。言い忘れていましたが、魔法玉にはダミーがいくつか紛れ込んでいます。ダミーに触ってしまうと、吹き飛ばされてしまうのでお気を付けください。では、頑張ってください』
「先に言えよ!」
『先に言えよ!』
俺とカークの声が重なった。
なんだよ、言い忘れてたって。あー、むかつく。俺たちが触ったのは、ダミーだったわけね。
まあ、ビケルも無事みたいだな。さて、これからどうするか。都合よくこいつと一緒になったから、ホセ戦の真意を問いただしたい所だが。こいつが正直に答えてくれるかどうか。
『シュラ君。ホセ君の怪我、大丈夫?』
「え」
なんだ、こいつ。自分が怪我させたくせに。
「あ、ああ。命に別状はないみたいだが」
『そう。良かった』
面で表情は見えないが、どうやらホッとしているようだ。
何か、おかしい。こいつは、傷付けようと思って傷付けたと思ったわけではないのか? 真意が読めない。あの、仮面のせいだ。
俺は、仮面に手を伸ばした。
『おっと。駄目だよ。この仮面は』
「タイト」
避けようとしたカークの身体を、地面に縫い付ける。
『なっ。ちょっと』
俺の強硬手段に、カークは慌てる。しかし、身体は縫い付けられ、どうすることも出来ない。
俺の手が、易々と仮面を取り外した。
「ソディ?」
そこには、ソディと瓜二つの顔があった。
いや、ソディのはずはない。ここにいるわけないし。眼鏡もしてない。
カークは諦めたようにため息を吐き、着ていたフードを取り払った。その背中には、白い羽が生えている。
「お前は、誰だ?」
俺でも意味の分からない質問だけど、これしか思い浮かばない。
『私は、カディー・ヤンク』
カークの言葉が、俺の頭の中に静かに浸透した。