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転生初期からイージーモード・少年期  作者: きと
クラスマッチ編
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第117話 「初めましてですね」

「……さい」


 声が聞こえた気がした。


「……さん。起きてください」


 どこかで聞いたことあるような、ないような。少し高めの男の子みたいな声。


「佐藤紡さん! いい加減、起きてください!」


「うわっ」


 はっきりと昔の名前を呼ばれ、俺の意識は一気に覚醒した。


「って、ここ、どこだよ」


 ただっ広い、何もない空間。果てさえ見えない。さっきまで、森の中にいたはずだ。それで、魔法玉に近づいて、飛ばされて。

 だけど、俺はこの光景をどこかで見たことがある。


「やれやれ。やっと目を覚ましましたか」


「だ、誰だ?」


 周りには、誰もいない。

 あの時と一緒だ。転生した時と。


「今回は、姿を見せますかね」


 俺の目の前に現れたのは、小さな男の子だった。おそらく人間なら3歳くらい。金髪に、金目。その背中には羽があり、着ている服のど真ん中に、何故か“5”と書いてある。変な服だ。


「チキナー?」


「違いますよ。あんな、地界の民族と一緒にしないでください」


「じゃあ、お前は誰なんだ」


 男の子は、一呼吸おいて胸を張った。


「僕は、サンク。神様の5番目の子供です」


「神様ぁ?」


 何を言っているんだ、このガキは。


「あ、信じていませんね? 言っておきますが、あなたを転生させたのもこの僕ですよ。その証拠に、あなたの本当の名前を知っているでしょう?」


「あ」


 確かに。こいつは、さっき俺のことを佐藤紡と言った。それを知っているのは、転生する前に出会ったやつと、俺を転生させたやつだけだ。サンにさえ、俺は名前を言ってない。


「これで、信じましたか?」


「まあ、信じざるを得ないが」


 あの森から一瞬でこの空間に移動したのもこいつの能力だろう。ってことは、もしかしてあの光も。


「お前、魔法玉に何か仕掛けしたのか?」


「魔法玉? 何のことですか? 僕は丁度良くあなたが気絶したので、ここに呼んだだけですよ。お話しがあったので」


 違うのか。何だったんだ、あのとんでもない衝撃は。他のやつらは無事なんだろうか。


「何だよ、その話って。俺は、早く帰らなくちゃいけないんだけど」


「重要な話しです。出来ればゆっくり聞いてもらいたかったのですが。お取込み中のようなので、手短に話しましょう」


 意外に、空気が読めるやつだな。


「まず、この世界には、神様と僕たちが住む上界。あなたたちが住む地界。そして無界が存在するっていうのは習いましたね?」


「あ、ああ」


「では、無界には何があるのか知っていますか?」


「いや、それは」


 習ってないよな。あの時、ホセに聞こうと思ったのに邪魔が入ったからな。思い出したら、Bクラスのやつらに腹が立ってきた。


「では、教えましょう。無界には、魔王と呼ばれる存在がいます」


「は?」


 いきなり、突拍子もないことを言い出したな。


「いいから、聞いてください。魔王は、100年に1度よみがえり、後継者に地界を侵略させます。その後継者は、魔王があなたが元いた世界から転生させた者」


「はぁ?」


 俺の疑問は止まらない。


 魔王が? 転生させるのか?


「魔王は、僕たちのように人を転生させる能力を持っています。そしてその人物に力を授け、地界を侵略させようとする。その魔王が、遂に動き出しました」


 信じられないことだらけだけど。神様がいるなら、魔王もいてもおかしくないのかな。


「侵略するって。俺が今いる世界を?」


 父上と母上と。マーラとカーナと。大切な人たちがたくさんいる世界を?


「そうです。魔王の力は強大。あなたの国なんて一握りでしょう。ですが、魔王に対抗できる者たちがいます。それが、あなたたちです」


「俺? たち?」


 たちってどういう意味だ?


「正確には、神様の5人の子供たちによって地界に転生した者たち。ということです」


「俺の他にも転生したやつが? って、そうか。サンもそういうことか」


「ええ。サン・メナクスは、2番目の子供ドゥが転生させた者です。他にも後3人、地界には転生した者がいます。その5人が、魔王に対抗する能力を持つのです」


 それが、俺が転生させられた理由なのか。


「なあ。それならもっと、チートとかに生まれ変わらせてくれても良かったんじゃねえか?」


 そんな使命があるなら、特殊能力でも付けといてくれれば。


「それは無理ですよ。僕は、5番目の子供ですから」


「どういうことだよ」


「神様の子供は、早く生まれた順に強い力を受け継いでいます。どれだけの能力を付加して転生させるかも、その1つです。サン・メナクスは望んだわけでもないのに転生して、高い剣力も持っていたでしょう? それは、ドゥが転生させたからです。末っ子の僕なんかは、非日常へ行きたがっている君を転生させるだけで精一杯でした」


 なんてこった。じゃあ、こいつじゃなくて、1番目の子供とやらに目をつけられていたら、今頃チートだったかもしれないってことか。


「お前のせいじゃないか!」


「おっと、そろそろ目が覚めるころですね。では、僕はちゃんと話しましたからね。魔王の後継者が侵略してくるまでに時間はありますが、それまでに仲間を見つけておいてくださいね。それでは、さよなら」


「あ、おい」


 俺の伸ばした手は空を掴み、そのまま視界は暗く染まっていった。



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