第114話 「強さの片鱗を見せてきたな」
『それでは、決勝に参りましょう! 決勝戦、特Sクラス所属シャルル・ミュンヘン対Sクラス所属ディック・コメテック』
ディックは、サバイバルにも出るから実力見ておかないとな。
『はじ…』
「うわっ」
ディックの叫び声が響く。
「お前! まだ始めって言われてないだろ!」
どうやら、シャルルの先制攻撃が繰り出されたらしい。俺には見えなかったが、ディックは避けれたのか。
「ちっ。早く終わらしたかったのに。あんた、意外とやるわね」
シャルルは、悔しそうな顔でディックを睨む。対するディックは嬉しそうだ。
「そりゃ、俺はSクラスの総長だから……。って。話してる時に、殴り掛かってくるんじゃねえよ!」
「あんた、バカっぽいから油断させたらいけると思ったのに」
だから、褒めたのか。
「うっせーよ」
バカっていうのは、否定しないのな。ケイトにも散々バカにされていたし、結構周知の事実なのかもしれない。
「Dクラスを潰したいだけなんでしょ? なら、その目的は果たせたじゃない。こんなバカバカしい戦いはやめましょうよ」
「はっ。お前ら、何か勘違いしてないか?」
シャルルが、瞳で問う。
「確かに、この大会をやると言い出したのはあのチビだ。その目的は、Dクラスを認めさせること。だがな、この大会に優勝したクラスはそのまま特Sクラスになれる」
総合順位をクラスに反映させるのは、じいさんが言い出したことだ。おそらく、Dクラスだけでなく全てのクラスにもやる気を出させるため。
「つまり、俺たちも実力を示せるチャンスってわけだ。カークのバカのせいでSクラスはポイントが稼げてない。ここは何が何でも勝たしてもらうぞ」
じいさんの思惑は成功だったわけだ。
「ふーん。そんなに特Sクラスになりたいの?」
シャルルは、ディックの熱い独説を聞いた上でも、興味なさげに問う。
「当たり前だろ」
ディックが胸を張って言った瞬間、ディックの身体が後ろへ吹き飛んだ。それまでディックのいた場所にはシャルルが皮肉そうに笑って立っている。
一体、何が起きたんだ? ディックの身体は、すでに舞台外に出ている。
「私にも勝てないあんたなんか、特Sになれるわけないでしょ。いや、あんただけじゃない。ここにいる全員がそうよ。そっちこそ勘違いするんじゃないわよ。剣術はあのバカが油断したせいで負けたけど。あんたたち落ちこぼれが、私たち特Sに勝てるわけないのよ」
おそらくシャルルがディックを吹き飛ばしたんだろうけど、全く見えなかった。ディックも今回は見えなかったんだろうな。初めは本気を出していなかったということか。
『ゆ、優勝は、圧倒的な力を見せつけた特Sクラス所属のシャルル・ミュンヘン! というわけで、第1位特Sクラス。第2位Sクラス。第3位Dクラスです!』
確かに、特Sクラスは剣術以外全ての競技で1位を取っている。しかも、Dクラスだけでなく全てのクラスを落ちこぼれと言ってのけた。それだけ、実力と自信があるということなのだろう。
『それでは、現在の総合順位を発表をさせていただきます! 第1位、特Sクラス30ポイント。第2位、Dクラス21ポイント。第3位、Aクラス10ポイントです! 明日はいよいよ最終日のサバイバル。僕も内容は知りませんが、今入った情報によりますと逆転は可能だそうです! それでは、また明日』
今は2位か。俺たちの実力を見せつけるには、やっぱり明日のサバイバルでも良い成績を取るしかない。
内容は分からない。各クラスの総長が出てくる。それでも、やるしかない。今まで、俺の仲間が頑張ってくれたんだから。