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転生初期からイージーモード・少年期  作者: きと
クラスマッチ編
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第113話 「待ってました」

『第3回戦は、Dクラス所属ノックル・ハンリ対Sクラス所属ディック・コメテックです! それでは、どうぞ!』


 Sクラスは、総長か。あんだけ大口叩いてDクラスのことをバカにしていたんだ。こいつも、自分に相当自信があるんだろうな。


「ったく。何で、俺がDクラスの落ちこぼれなんかと戦わなきゃいけないんだよ」


 相変わらず不服そうだが、その顔は笑顔に満ちている。その奇妙さに、ノックルも若干ひいている。


「お前、言ってることと真逆だぞ」


「あ? そんなの、決まってるだろ。合法的にお前らをいたぶれるんだからよ!」


 ディックは一気にノックルに距離を詰め、右腕を下から突き上げる。ノックルはそれを左に飛んでかわす。


「なんだよ。避けてばっかりか? そんなんで、俺から逃げられるとでも?」


 ディックはノックルを追撃し、追い詰めていく。


「ほらほら! いつまで避けれるかな?」


 これじゃあ、さっきと一緒だ。いつか終わりが来る。

 前に進むって言ってたけど、どうするつもりなんだ。


「くっ」


 ノックルが舞台のふちまで来る。


 やっぱり、無理なのかな。あいつの後悔をなくすことなんて。自ら戦おうと思うことなんて。


「お前さ。なめてんの?」


「え?」


 絶え間なく攻撃をしていたディックの手が止まる。


「あのチビが落ちこぼれじゃないって証明するっつうから、付き合ってやってんだぞ。逃げてばかりで、証明できると思ってんの? それとも、俺からこれだけ逃げられるんだぞってこと?」


 ディックがイライラしているのが分かる。


「ち、違う。俺は、触っただけで傷つけちゃうから」


「は? バカにしてんの? 勝負なんだから傷ついて当たり前だろ」


「いや。そういうことじゃなくて」


 ノックルの言いたいことは何となく分かるけど。事情も知らないディックにとっては、何を言ってるのか分からないだろうし。実際、ディックの言っていることは正論だし。


「違わないだろ。お前がしていることは、相手をなめてるんだよ。ここに立っているやつはみんな、覚悟を持っている。戦う覚悟。傷つく覚悟。傷つけられる覚悟。その覚悟がないやつが、ここに立ってるんじゃねえよ」


 いつか、父上に言われた言葉が重なる。誰かを傷つける覚悟。自分が傷つけられる覚悟。


 ノックルは予期せぬことで、大切な人を傷つけてしまった。その後悔は消えない。でも、今戦わないこととは話は別だ。舞台に立っている限り、ノックルも覚悟を持つべきなのかもしれない。


「俺のことなんか、何も知らないくせに」


「知らねえよ? だからなんだよ。そんなこと関係ねえだろ。勝負は、勝つか負けるか、だ」


 ディックがニヤリと笑う。見た目の通り、好戦的のようだ。

 バカだと思っていたけど、戦うことに関しては一本筋が通っているのかもしれない。


「お前がどうしても動かねえっていうなら、俺は遠慮なく倒してやるよ!」


 ディックが再び、腕を振るう。その腕は真っ直ぐとノックルに伸びていく。


「俺は、もう後悔しないって決めたんだ!」


 ノックルがディックの腕を避けてディックの腹を殴る。ディックは後ろに吹き飛んだものの、床に膝をついて笑っている。


「なんだよ。やれば出来るんじゃねえか」


 腹は痛そうだが、そんなに傷がついているようにも見えない。


「お前、コナーだろ? 俺もコナーだ。いくらお前の力が強いって言っても、同じコナーの俺には通じない。純粋に、武術の勝負だ」


 なるほど。コナーだから、ノックルの力にも耐えられるのか。

 ディックも、その力がありすぎて、本気で勝負できる相手がいなかったのかもしれない。だから、あれだけの勝負論が吐けるのだ。


「確かめてやるよ。お前が、落ちこぼれかどうか」


「負けない。俺を信じてくれたシュラのためにも」


 ノックルが、初めて自分から構えた。ノックルも、本気だ。


 ノックルが、地面を蹴って距離を詰める。そのまま、足を横に振った。ディックは、手で足を受け止める。その掴んだ足を起点に、ノックルの身体を床に叩きつけた。


「ノックル!」


 俺たちの心配をよそに、ノックルはすぐに立ち上がる。その顔は、どこか楽しそうだ。


「はっ。少し、チビの言った意味が分かった気がするぜ」


 さっきから聞き過ごしてるけど、チビって確実に俺のことだよな。言っとくけど、まだ7歳なだけで、そんなにチビじゃねえ!


「何がだ?」


「お前、何でDクラスなんかにいるんだ。俺と対等に渡り合えるのに」


 ディックの言葉は、全生徒の耳に届いている。つまり、公の電波で、ディックがノックルの実力を認めたということだ。


「ま、それでも勝つのは俺なんだけどな!」


 ディックの言葉に呆けていたノックルの顔に、ディックの拳が直で入った。ノックルは、何の防御も出来ないまま、舞台外に飛ばされる。


「あ」


『決まりました! 3回戦、勝者はSクラス所属、ディック・コメテック!』


 気絶したままのノックルは、そのまま運ばれていく。命に別状はないだろう。


 ノックルも、認めてもらえて嬉しかったんだろうな。俺もディックの言葉に気を持って行かれたから、しょうがないけど。それに、それが目的だったんだからいいか。

 Sクラスの総長がDクラスを認めたことは、それなりの影響を及ぼすはずだ。


 あとは、俺がサバイバルで頑張るだけだな。



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