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転生初期からイージーモード・少年期  作者: きと
クラスマッチ編
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第111話 「そろそろ認めてくれませんか」

「まだよ!」


 ケイトが剣に手を伸ばす。それよりも先に、キャメルの剣がケイトの頭を横から殴った。


 舞台を静寂が支配する。ケイトは倒れたまま動かない。


『え、えー。殺してはないですよね』


「当たり前でしょ。気を失っているだけよ。これで、私の勝ちよね?」


 どうやら、剣の形状を平らにして殴ったらしい。血が操れるってことは、剣の形も変えれるってことなんだよな。


『第3回戦、Dクラス所属キャメル・マクベスの勝利です!』


 レンは高らかにキャメルの勝利宣言をするも、その顔は驚きと戸惑いに満ちている。


 Dクラスが勝つなんて思ってなかったみたいだ。でも、キャメルが舞台上で言った言葉は、全員の耳に届いているはずだ。俺たちは、落ちこぼれではない。


『4回戦に行きましょう! 4回戦、Sクラス所属サン・メナクス対Aクラス所属ユアン・メイスン。では、舞台にどうぞ!』


 ケイトは医療班に運ばれていき、舞台は次の準備が整う。


 サンとユアンの対決なんて、中々見られるものじゃない。


「久しぶりだな、サン。まさか、お前と当たるなんてな」


「ユアン。私に勝てると思っているの?」


 好戦的だし、知っている仲ともあって、2人ともやる気満々だ。


「剣術は俺の方が上だっただろう?」


 ユアンは、剣術でAクラスまで上がった。だからこそ、この勝負は譲れないのかもしれない。


「それは私がAクラスにいた頃の話しでしょう? あの時と一緒だと思わないでよ!」


 先に動いたのは、サンの方だった。

 急加速してユアンの正面に立ち、そのまま剣を横に振る。


「おいおい。そんなに急くなよ」


 しかし、ユアンは余裕そうな表情で剣を抜いてサンの斬撃を受け止めた。


「カークのバカのせいで、Sクラスにはポイントが入ってないんだよ。ここら辺で勝っとかないと、ディックがうるさいからね」


 サンは受け止められたことには対して驚かず、攻撃を繰り返す。ユアンはサンの剣を受け止めているものの、防戦一方だ。


「お前はこんな大会興味ないと思っていたんだけどな」


 ユアンは意外そうな顔をする。


 確かに、サンは興味を示しそうにない。面白いことが好きなやつではあるが、案外自分の利益に忠実で、こんな何の得にもならない戦いに出ていることすら不思議だ。


「お前のじいさんがディックを挑発するからだろ!」


 サンは、力を込めてユアンの剣をはじく。ユアンはそのまま後ろに飛ばされる。サンは攻撃の手を緩めず、体勢を崩したユアンに剣を振り下ろす。


「それだけか?」


 ユアンは膝を地面につけたまま、サンの剣を受け止めた。


「ど、どういうことだよ」


 サンの動きが止まる。ユアンは身体を持ち上げ、サンの耳に顔を近づけた。


「大方、シュラの…」


「な、なに言ってるんだよ!」


 サンは、顔を真っ赤にしてユアンの顔を見る。その剣には最早力はこもっていない。

 ユアンはサンの剣を蹴とばした。


「あ」


 サンの剣は弧を描きながら、舞台の外へと落ちる。


「はい。俺の勝ち」


 ユアンは、ニヤリと笑って剣を収めた。


「ず、ずるい! あんなの」


「ずるくねぇよ。剣がなきゃ、お前は戦えない。戦闘不能だ。だろ? レン」


 サンの動きが止まった一瞬。ユアンは何を言ったんだ?


 俺の名前が聞こえた気もするけど、声が小さすぎて続きが聞こえなかった。

 確か、前もこういうことがあった気がする。あれを言ったのは、キャメルか。


『えーと。大変不本意ですが、Aクラス所属ユアン・メイスンの勝利です。続きまして、決勝に移らせていただきます!』


 サンは舞台を降りてもなお、文句を言っている。


 あれは、相当怒っているぞ。本当に、何を言ったんだよ。ユアン。


『決勝戦、Dクラス所属キャメル・マクベス対Aクラス所属ユアン・メイスン』


「ストップ。俺は、決勝を辞退する」


 え?


 全員の疑問が、ユアンに突き刺さる。


「お前、不死身なんだよな?」


 ユアンは全員の視線なんかお構いなしに、キャメルに問いかける。


「ええ。不死身っていうか。尽力が無限ていうか」


 結果的に、不死身ってことなんだけどな。


「つまり俺がどれだけ傷つけても、お前は戦闘不能にはならないんだろ。すぐ治るってことは。剣も、血から出来ているなら無限にある。それなら俺は、お前を倒す術を持ち合わせていない。だから俺は決勝を辞退するよ」


 ユアンは、自分とキャメルの力量を冷静に分析している。おそらく、キャメルが不死身でなければ、血の剣でなければ、倒せるということなのだろう。


「え、でも」


「いいんだよ。俺はお前と戦う理由はないしな。それとも、俺に殺してほしいの?」


 ユアンの言葉に背筋が凍ったのは、多分俺だけではない。


 ユアンは、キャメルに勝つには殺すしかないと判断したのだ。そして、殺せるだけの力量も持っている。だからこそ、辞退したんだ。勝とうと思ったら、本当に殺しかねないから。


「わ、分かったわ」


『よろしいですか? では、決勝はDクラス所属キャメル・マクベスの勝ち! 3位決定戦は、ケイト・ミューンが依然として目を覚まさないので、サン・メナクスの勝利とします。剣術第1位Dクラスに10ポイント、第2位Aクラスに5ポイント、第3位Sクラスに3ポイント入ります!』


 よっしゃ! ユアンのおかげだけど、Dクラスが1位取れたことには変わりない。


 少しは、Dクラスへの感情が変わってくれるといいんだけどな。


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