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第11話 「今日も一日が終わる」
王子様っていうのは、もうちょっと自由なものだと思ってたんだ。
「シュラ様。もう寝ないといけませんよ」
「えー。もう少しいいだろ?」
現在、8時。
まだまだ夜はこれからなのに。5歳児はこれくらいに寝るのが普通なのか?
「だめです。早く寝ないと大きくなれませんからね」
俺付きの侍女、ニール・キャンシ―は、俺をベッドへ促す。
金色の綺麗な長い髪を1つにまとめ、茶色い瞳は俺に優しげな視線を向けてくる。
どうしても、本当の母さんを思い出してしまう。
「ニール。俺、まだ眠くない」
「なら、私がそばにいて歌を唄ってあげますね」
部屋の中に、ニールの美声が響く。
ニールは、普段から俺の行動を制限してくる。あれするな、これするな。まあ、父上や母上から見とくように言われているんだろうだが。
普段はうっとうしいが、こいつの子守歌は好きだ。俺の耳に、頭に、心に、静かに浸透してくる。まるで、本当に5歳児になったみたいだ。
俺は、うとうとして目を閉じた。