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転生初期からイージーモード・少年期  作者: きと
クラスマッチ編
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第102話 「ホセの自信はどこから来るんだ?」

 舞台の上の様子が分かるように、グランド全てに響き渡るスピーカーがついている。レンはすでに舞台外に移動し、中には2人しかいない。


 Aクラスって言ったら、ホセが元いた所だろ。


「よお。久しぶりだな、ホセ」


 やっぱり、知り合いなのか。


「誰ですか? あなた」


 ホセの一言で、ネックだけでなく全校生徒が耳を疑った。


「いや、俺だぜ? 法術で争っていたじゃねえか」


「ああ。僕に一度も勝てなかったネック・バカ、ですっけ? あいにく、僕よりバカな人間の名前を覚えるほど、僕も頭が良くないんですよ」


 ホセの先制攻撃にやられたのは、ネックだけではなかった。


 悔しそうなネックをよそに、生徒の間では失笑が飛び交っている。これは、恥ずかしいな。


「お前! ウォール・サイ!」


 ネックの手から出た水の刃が、ホセに向かっていく。しかし、ホセに防御をする様子は見られない。というか、笑っている?


「ちっ」


 水の刃は、ネックの腕の動きに反応して、空へと向かっていった。


「あれ。思ったより、バカではなかったんですね」


 ホセの顔に笑みが浮かぶ。普段、あんなに笑わないくせに。戦いの場になると、どこか嬉しそうだ。


「相手を傷つけたら終わり。そのくらい、忘れてねえよ」


「ふっ。まあ、あなたが僕に勝てないことには変わりないですがね」


 ネックに挑発は効かなかった。それでも、なおホセは挑発を続ける。いや、もしかしたら挑発ではなく、あいつは事実を述べているだけなのかもしれない。


「そういう自分に自信あるところ、変わってねえな。そんなんだから、カディーにも逃げられて、Dクラスにも落とされんだよ」


 立場が変わり、ネックがホセを挑発する。ホセは、笑みを封じ込め、無表情になっている。いつものホセの顔だけど、話しの内容が内容だけに、怖い。


「ねえ。シュラくん。お姉ちゃんのこと」


「ああ。聞いてる。多分、知らない人間もいるんだろう」


 ソディーの不安そうな声の意味は分かる。


 ホセにとって、カディーのことは禁句に近い。それは、ホセが罪悪感を持っていることを知っているからだ。だけど、ネックは何もしらないくせに、ホセを挑発するためだけにカディーのことを持ち出した。


「何も知らないくせに」


「あ? 何て? 図星突かれて、何も言えねえのか?」


 ホセは、本を開く。今までは心も読まずに、あんなに自信満々だったのか。


「もういいです。あなたみたいなバカにこれ以上時間をかけていては、僕を信じてくれている仲間に迷惑です」


 不謹慎だけど、この嬉しい気持ちをどうすることも出来ない。


 仲間って、俺たちのことだよな? ホセが俺たちを仲間って言ってくれるのって、珍しい。


「仲間って、Dクラスの落ちこぼれのことか? 俺が、Dクラスなんかに負けるかよ! 特魔法、フィーテック!」


 ネックの手の中に、巨大な球体が浮かぶ。Aクラスくらいになると、特魔法が簡単に出せるのか。


「俺は、こんなに大きい魔法が出せるようになった。今のうちに降参しておいた方がいいんじゃねえのか」


「霧散しろ。特魔法、イレーフィット」


 ホセの言葉が響いた瞬間、ネックの球体が消え去った。

 ネックの驚いた目が自分の手とホセを行ったり来たりしている。ネックでも知らない魔法なのか。


「イレース・フィッテ・ネイトを組み合わせた特魔法です。効果は、相手の攻撃を消し去ること」


「そんな魔法、昔は」


「いつの話しをしているんですか? 僕は、Dクラスのホセ・エミリオですよ」


 さっきから、素直だな。ていうか、こいつもこいつなりにネックに対して怒っているんだろうな。


「分かったでしょう? あなたがどんな魔法を繰り出そうとも、僕が消し去ってあげます。あなたこそ、今のうちに降参しておいた方がいいんじゃないですか」


 人を怒らせることに関しては、ホセが一番なんじゃないか。


「はっ。するかよ! Dクラスになんか負けてたまるか」


「そうですか。仕方ない。この魔法は後にとって置きたかったのですが。特魔法、コーラス・ヒーラ」


 賢者級の魔法が詰め込まれたホセの本が光り出す。コーラスとヒーラって、賢者級だよな。それを組み合わせた特魔法って、一体どんな。


 静寂が保たれたグランド内に、小さな呟きがもたらされた。


「ま、参りました」


 発信元は、ネックの口。表情は断然やる気なのに、口からは正反対の言葉が繰り返される。まるで、言わされているかのように。


「はい。これで、終わりです」


 ホセとネック以外、いや、おそらくホセ以外誰にも今の状況を説明できない。全員の見開かれた目がホセに向いた中、ホセの本を閉じた音が奇妙に響き渡った。


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