第101話 「始まりますってよ」
『さあ! 始まりました! 第1回クラス対抗大合戦。実況を務めさせていただきますは、みなさんご存じ。Sクラス所属、みんなのアイドル、レン・シーカーです! よろしくお願いします! さて、今回の大会。理事長主催ですが、言い出したのはDクラス所属、我らが王国の王子様、シュラ・イレーゼル。彼が総会でケンカを売ったことが発端です。この大会、なんと総合順位をもとにクラスを決定。みんな、特Sクラスになりたいかー!』
不自然なほどのハイテンションで第1回クラス対抗大合戦は幕を開けた。
グランドのど真ん中に舞台が設置され、全校生徒がそれを取り囲むようにして立っている。多分、あの舞台で競技が行われるのだろう。そのくらい大きい。そして、その大きい舞台と全校生徒を余裕で収納するグランドは、かなり大きい。レンは、現在その中心に立っていた。
ちなみに、レンの問いに対して黄色い声援で応えたのは女子のみ。男子はブーイングを送っている。どうやら、みんなのアイドルっていうより、女子のアイドルらしいな。
『では、さっそくこの大会の説明をさせていただきます』
レンは、男子のブーイングにもへこたれない。
『大会期間は3日間。1日目に、法術と学術。2日目に、剣術と武術。3日目に、サバイバルを行います。競技内容はそのつど説明させていただきすが、サバイバル以外は、トーナメント方式。トーナメントの組み合わせは、試合直前のくじ引きで決定します。サバイバルは、僕も何をするのか知りません』
語尾にカッコワラが付きそうなテンションで言った。
確かにレンはかっこいい部類に入ると思うから、女子のアイドルっていうのは納得ができる。でも、男子からみたらなんか気に食わないのも確かだ。
『それでは、さっそく第1競技、法術の説明に移らせていただきましょう! 法術の競技はいたって簡単。魔法のみを使って1対1で戦闘をしていただきます。ただし、注意点が1つ。相手を傷つけてはいけません』
法術の説明が始まった。ホセも真剣に聞いている。が、最後の言葉はどういう意味だ?
『は? と思われる方も多いでしょう。ああ、男子生徒の方。そんなブーイングしないで。気持ちよくなっちゃいますから』
今、分かった。どうしてこいつが男子に嫌われながらも放送が出来るのか。
こいつ、変態だわ。
『つまりですね。相手を傷つけることなく、相手に参ったの一言を言わせた方が勝ちです。もちろん、手段は法術なら何でも使っていいですよ』
恐怖を与えるとか? 力の差を見せつけるとか? そういうことなのか。
『では、第1回戦行ってみましょう! くじを引かせていただきます』
レンが、そばに置かれた箱に手を入れる。
ホセの方を見ると、緊張している様子も悩んでいる様子も見られない。だけど、出来れば一番は避けたいところだよな。この奇妙なルールの中、他のやつらがどんな戦い方をするのかも見てみたいし。
『さて、組み合わせが決まりました! 第1回戦は、Aクラス所属ネック・バンカ対Dクラス所属ホセ・エミリオ。では、舞台に上がってきてもらいましょう!』
何で、こう、俺の希望とは正反対に進むかな。
「おい、ホセ。大丈夫なのか?」
何事もなかったように、舞台に上がっていくホセを呼び止めた。俺が呼び止めなかったら、多分こいつ何も言わずに行こうとしたよな。
「何がです?」
「だって、相手を傷つけることなく、参ったって言わせるって」
ホセが強いのは分かっている。でも、心配にはなるじゃないか。
「王子様」
ホセは、ため息をついた。
「誰に、言ってるんですか?」
ホセは、本を見せて不敵に笑った。
「ああ、そうだったな。頑張れよ」
心が読めることほど、この勝負に適したものはないかもな。