第100話 「初めてなんじゃないか?(Dクラス視点)」
Dクラスとは、落ちこぼれの集まるクラスである。その考えを学校全体が持っていることを、Dクラスにずっといた5人は知っていた。
だからこそ、やる気なんか出さなかったし、他の人たちと仲良くしようなんて思いもしなかった。本人たちこそが、自分たちは落ちこぼれなんだと強く感じていたから。
「なあ。シュラのことどう思ってる?」
シュラが総会に行っている間、教室に待機していた5人。初めに口を開いたのは、意外にもノックルだった。
「どうってどういう意味よ」
「そのまんまだよ、キャメル。どういう感情を抱いてるかって言った方が正しいか」
「私は、感謝してるよ。私なんかを仲間にしてくれたんだから」
ノックルの問いに答えを出したのは、ソディーだった。蔑んで育ってきたソディーにとって、必要だと言ってくれるシュラは感謝に値する人物なのだ。
「俺も同じだ。俺なんかがってずっと思ってた。でも、シュラは必要としてくれた」
ソディーと全く同じ答えを出したのは、ビケルだった。
「ホ、ホセくんは?」
ソディーはびくびくしながら、幼馴染に問うた。
ホセが罪悪感から自分と会話しなくなったことを知っているソディーは、ホセが返してくれないと思っていたにも関わらず、勇気を出して話しかけてみた。でも、変わったのはソディーだけではなかった。
「僕も感謝してますよ。ある意味、救ってもらいましたから」
誰も信じられなかったホセにとって、裏表なく真っ直ぐぶつかってくるシュラの存在は救いとなっていた。
「私もよ。救ってもらったから。そういうあんたはどうなのよ」
「俺は、少し怖い」
ホセと同じ答えを出したキャメルに対して、ノックルは素直に自分の答えを口にした。
「あいつは、俺を怖がらずに近寄ってきた。自分が傷つくのをいとわずに。俺たちが傷つかないように。その真っ直ぐさが少し怖いんだ」
ノックルはシュラが傷ついてしまったのを直接見ている。だからこそ、自分を見失ってまで人を助けようとする真っ直ぐさが怖いと思っているのだ。
「それなら。それなら、今度は私たちが助けてあげようよ!」
ソディーが珍しく声を大にした。そのことに、他の4人は少なからず驚いていた。
「そうですね」
ホセが、ソディーの頭を撫でる。
幼馴染と言っても、ホセはソディーの姉と仲が良く、年下のソディーは妹のように感じていた。シュラをもってしても、ホセの罪悪感を消すことは出来ない。でも、ソディーと関われるくらいにはホセの心が軽くなったのも確かだった。
「そうよ。仲間なら、助け合うものでしょ」
「そうだな。あいつはまだ幼い。だからこそ真っ直ぐなんだろうけど。俺たちが、守ってやらないとな」
キャメルとビケルは同意を示す。
「んだよ。全員の意見が揃うって、珍しいな」
「シュラくんが、私たちをまとめてくれたんだね」
5人全員が、本当の意味で救われたわけではない。
傷ついた心は、いまだ胸の中に残っている。だけど、シュラのおかげで仲間と呼び合える存在が出来たのも確かだった。