第98話 「多種多様な反応だな」
「ふっ」
最初に表情を崩したのは、ディックだった。
「ふっ。はははははははっ。お前、頭おかしいんじゃねえの? Dクラスが俺たちに勝てるわけないだろ」
ディックの顔は笑っているが、その黒い瞳は冷たく俺を見つめている。まるで、俺の挑戦に対して怒っているようだ。
「なんだよ。恐いのか、ディック」
「んだと、ユアン。その言い草だと、お前は賛成なのかよ」
「ああ。俺は、シュラの挑戦を認める」
「私も、認めるわよ」
ユアンが賛成してくれるのは、予想済みだ。でも、ケイトまで簡単に乗ってくるとは思わなかった。
「ケイト。お前まで何言ってるんだ。こんなもん、やる前から結果見えてるじゃねえか」
「だからこそ、徹底的にぶっ潰すのよ。落ちこぼれのDクラスが二度と私たちに歯向かえないように」
ケイトの恨んだ目が俺を射抜く。
そういうことか。俺の意見に乗っかって、合法的にぶっ潰したいわけね。キャメルたちとの因縁もあるしな。
「ふんっ。お前は?」
ディックの視線は、Cクラス総長に向いている。
「俺は、サックスさんに従います」
「相変わらずだな。だとよ。後はお前が決めろ。サックス」
結局、全権はサックスにあるのか。
Cクラス総長のサックスに対する態度は一体何なんだろう。
「そうだね。僕も意味ないと思うよ。どうせ君たちが負けるんだろうし」
くそ。こいつもかよ。
こいつらは、自分たちが俺たちより優れていることを信じて疑ってない。俺たちのことを、何も知らないくせに。
「何じゃ。面白いことを話しておるのお」
俺の後ろから、声がした。部屋の中には各クラスの総長が揃っている。このタイミングで入ってくるやつなんて、いないはずだ。
「祖父ちゃん」
ユアンが、苦い顔をする。その言葉を聞いて、俺はやっと誰かが分かった。
「じいさん。何でここにいるんだよ」
部屋に入ってきたのは、リーン・メイスン。自称庭師。んで、俺の現在の剣術の師匠的な人。
「何でと言われてものお。サックス。わしはこの部屋でイレギュラーな存在かの?」
「いいえ。遅かったですね。理事長」
「理事長?」
俺の驚いた顔を見つめて、じいさんはニヤニヤしている。こういう所、ユアンにそっくりだな。
「庭師兼理事長じゃよ」
なんだ、そのずるい肩書きは。
「それで、サックス。シュラの挑戦は受けんのか?」
「だって、意味がないでしょう」
「本当に、そうかのう。おぬしたちは、一度痛い目に合う必要があると思うがの」
安い挑発だよな。そんな簡単なのに乗る奴なんて。
「んだと、じいさん。それ、どういう意味だよ!」
いたよ。こいつ、Sクラスのくせに頭悪いな。
「そのまんまの意味じゃよ、ディック」
「つまり、学校側はオッケーと受け取ってもいいわけですね? 理事長」
「そうじゃ」
じいさんは、満足そうにうなずく。
まさか味方してくれるとは思わなかったし。ここにじいさんが現れるのも想定外だったけど。理事長がこっちの味方とは、嬉しい誤算だ。
「分かりました。やりましょう」
よっしゃ。
サックスはため息をついてるし、ディックはめんどくさそうな顔をしているが気にしない。実行に持ち込めば、こっちのもんだ。
「よし。では、ここに理事長の名の下、第1回クラス対抗大合戦を開催する」