第97話 「やっと始動です」
各クラスの総長が一堂に会す総会は、月に一度開催される。基本的には総長が出席しなければいけないが、総長が認めた場合は代理の者が1人出てもいいことになっているらしい。
キャメル、ソディー、ホセ、ノックル、ビケルが俺の手を取ってくれて約1週間。
ビケルの許可を得て、俺は総会にやってきた。
「各クラスだから、俺の他に5人いるってことだよな」
俺は、意を決してドアを開けた。
「失礼、します」
「シュラ」
中から、馴染みのある声が聞こえた。
「ユアン。どうしてここに」
部屋の中には、5人の生徒。まだ時間じゃないのに全員席に着いている。
「俺は、Aクラスの総長だからな」
ユアンがいるなら、心強い。
「ようこそ。総会へ。僕は特Sクラスのサックス・アリスト。よろしく、シュラ・イレーゼル君」
赤い髪に赤い瞳の少年がドアの所まで来て、俺に手を出してくる。一見友好的に見えるが、目は笑っていない。
特Sの総長ってことは、ある意味この学園のトップだろ? こいつは、一筋縄ではいかないやつだな。
「よろしく」
「サックス。誰そいつ」
一番奥に座っていた黒髪の少年が、だるそうに言葉を発した。
確かに、俺はまだ自己紹介をしていない。なのに、何でこいつは俺のことを知ってたんだ。
「ディック。あんたまだ学術疎かにしてるんでしょ。そんなんだからSクラス止まりなのよ」
「うっせぇよ。ケイト。Bクラスでちまちまいじめやってるやつに言われたくねえ」
ディックと呼ばれた少年の隣にはケイトが座っている。
あいつ、Bクラスの総長だったのか。相変わらず、気が強そうだ。
「ディック君。シュラ君は、この国の王子様だ。知らない君が悪い」
なるほどね。キャメルやホセも知ってたんだ。上のクラスのこいつらが俺を知っているのもおかしくない。
「サックスさん。時間です。そろそろ始めませんか?」
黙っていた金髪の少年が口を開いた。前髪が鼻上まで伸びており、目が見えない。というか、顔の半分が見えない。
今までの会話から察するに、あいつがCクラスの総長なんだろうな。
「ああ。シュラ君。ビケル君でなく君が来たということは、何か言いたいことがあるんだろう?」
サックスを含めた全員が、俺に視線を向ける。Cクラスの総長はどこ向いてんのか分かんないけど。
今が、言うべき時だな。
「俺は、Dクラスのシュラ・イレーゼル。あなたたちに、提案したいことがあります」
全員真剣な目で俺を見つめているのに、ユアンだけはニヤニヤしている。まあ俺の考え知ってるし。面白いことを期待してるんだろうなあ。
その期待に応えうる提案だから、俺も少し笑みがこぼれてくる。
「提案っていうのは?」
「どうせ、Dクラスの落ちこぼれが提案するものだ。たいしたことねえだろ」
はっきりと言葉に出してバカにしてきたのはディックだけだが、それが学園全体の総意であることを俺は知っている。
「俺たちが本当に落ちこぼれかどうかはっきりさせませんか? 俺たちDクラスは、あなたたちに勝負を挑ませていただきます」
さすがは、各クラスの総長たち。突然の挑戦状に対して、誰も表情の変化は見せなかった。