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外伝 チェルヴォ・ファンタズマ~戦鹿の亡霊~

 1942年2月に発生した日英のケファロニカ島沖海空戦は、イタリア海軍並びにイタリア空軍にとって大きな影響を与えた。具体的には、同海戦に於いて直接参加したチェインニ少佐による報告書、いわゆるチェインニ報告書ラポートによるものが部内で回覧された事に端を発する。この報告書を端的に表すとまず、単座戦闘機は洋上戦闘に耐えうるという教訓であり、洋上飛行の訓練に注力すべしというものだ。これはJu-87Rをその搭乗機とするチェインニ少佐の部隊にとって、護衛の有無はその攻撃の成否に関わるものだから当然ともいえる。

 この当時、空母アクィラの建造に合わせてイタリア内でも艦上機の開発を進めていたが、その基本的なプロットは洋上飛行の観点からその全てで複座の機体を考慮しており、Re.2001の改造タイプやG.50の改造タイプもすべて複座であったが、それが少数機の生産で済ます事になったのは間違いなくこの報告書に依るところが大きい。少数生産だけ残ったのは、あるいは少数機の誘導機パスファインダー自体は居ていいという事に過ぎない。用兵からして大きく転換してしまったと言っていいだろう、あるいはこのタイプを爆撃機として運用するとした・・・なんてことはない、英海軍のフェアリーフルマーの焼き直しである。

 これに関しては、もう当時の時点でかなりの改設計をレジアーネ社およびフィアット社に依頼してしまっており、完全な不採用は両社の臍を曲げるという判断からであろう

 そしてもう一つ言及されたのは、空冷機の復権である。舶来信仰のようなものはどこにでもあるが、傑作品であるDB-601が隣国にあったためにイタリア各社はそのエンジンを競って搭載しようとした。結果が品薄による生産機数の低下であるが、日本軍が運用している零戦にしろ天山、疾風にいたるまですべて空冷機で既存のイタリア機より性能を凌駕していたという事である。

 空冷エンジン自体は戦前から旧式なシステムであると見られており、かつ、シュナイダーレースを始めとしてエアレースでの実績から先進性と旧守が入り乱れるイタリア設計陣にとって、風穴を開けた風となった。これには隣国ドイツでのフォッケウルフFw190A-2のロールアウトと大規模な実戦配備が伝わりだす事もそれを強く後押しした。

 とはいえ、いきなり空冷の単座艦上戦闘機を作成しろと言っても出来るわけがない事は各方面も理解しており、既存の物を改造してしかそれを得ることは出来ないという事も一致していた。そして、そのベースとなるものとなると、現在DB-601を搭載して生産が行われている現場を混乱させるという事で、マッキ社はこれを拒否し、レジアーネ社は同じ空冷であっても自社のRe.2002の改良に非常に苦慮しており、参加を断念。そもそも本命であった2001ORがぽしゃったので臍を曲げたとも言われる。そしてフィアットはG.55の初飛行が迫っており、これに注力しなければならない状態にあって余裕が無いという状況下にあった。

 そこで、手を挙げたのがカプロニ社、正確に言えばF・ファブリッツィ技師である。彼は自身の手によるカプロニ・ヴィッツオーラF.5で自信をもった機体を再びDB-601を搭載した機体へと改修され、その機体が事故によって失われるという悲劇に見舞われたばかりであった。さらにはF.6に至ってはファブリッツィの名を冠しているものの、主務者はG.ネグリが務めていたし、さらには今後の資源不足の為に木製機のF.7を設計してくれ、と無理難題に直面する直前でもあった。しかも、搭載されるべきエンジンは空冷でも採用例の本当に少ないX型のエンジンとあっては失敗が目に見えていた。


『ある程度まとまった空冷エンジンさえ入手出来るのであれば、いくらでも改修してみせる!』


 ファヴリッツィ技師がそう息巻いたのも無理はない。

 となれば問題は、該当するエンジンがイタリアのいったいどこにあるのかという部分になる。前記のRe2002に搭載されたエンジンは気難し屋で、最初の部隊こそ1942年中に配備されたものの次の部隊はそれから10か月後になるという見込みとあっては、それを分けてもらう事も出来ない。

 そこに手を差し伸べてきたのが当の日本海軍であった。といっても彼らも慈善事業や協力体制の構築の為に近づいてきたわけではなく、彼らなりの避けられない事情の為でもあった。つまり、空母艦載機として搭載している零戦の予備エンジンが非常に少ないという事である。これは、元々基地空として予備エンジンの備蓄もあった陸軍航空隊と較べると既に喫緊の課題として差し迫った問題であり、空母内の工作機械で持たせてはいるものの、いつ大幅な運用能力の低下をきたしてもおかしくないという判断が下されていた。どこかで補給を得ることが出来ないかを考えるならば、イタリア側と接触をするほかなかったのだ

 反対意見が無かったわけではない。誉エンジンの登場で既に枯れた技術となっている栄21型とはいえ、自国の発動機や機体は機密の塊だ。これまで積み上げてきた技術の結晶でもある。これを喫緊の課題としても提供するべきではない。陸軍航空隊がまだ維持できているのであるから軽空母2隻分の零戦のあるなしで状況が大きく変わるべくもない、減少もやむなし、現地で工夫せよ!という声である。供与に賛成する現地司令部や内地の支持者に対しては国賊と罵るような輩も居なかったわけでもない。

 それを折れさせたのは小島少将及び豊田大佐からなる駐独経験のある人物筋の説得による。彼らはイタリア軍ではなくドイツ軍の洋上航空戦能力の欠如を認識しており(前者は以前航本の造兵監督官、後者は鳳翔乗り組みの航空屋という経験者であった)これの売り込みをした方が後々に日本にとって有利に働く、儲けることが出来るぞ、と吹聴して回ったのだ。のちに彼らを知る人物からはまるでセールスマンの真似事の様な事をしていると言われたほどだ

 そして、供与するエンジンの方も、最初はいわくつきの物を与えるという詐欺まがいの事をする。というのだから狸にも程がある。このエンジンと言うのが、バーリで空襲を受けて沈没した冲鷹が、比較的港に近い地点であったため現地に居合わせている工作艦朝日や、当のイタリア海軍のサルベージ船アンテオの手により、大まかサルベージ可能というのが伝えられていており、それを供与するというのだ。一回海水に浸かった代物なんだからというのが、彼らの殺し文句だとも伝わっている。(実際には最大で冲鷹のエレベーターまでが回収されイタリア側に供与されている)


『死体を剥ぎ取って戦わせる、これじゃあ幽霊のようだ』


 その当時、サルベージの内容を聞いた元冲鷹乗り組みのパイロットはこう言って呻いたとも伝わっている。ともかく、このサルベージされたうえでメンテナンスされて動かすことが出来たエンジンが15基、そして予備機分として残存の大鷹、雲鷹の保有していた完備状態のエンジンが4基の計19基がファブリッツィの手元に届くことになる。

 ファブリッツィはこれをもとに昼夜を問わず作業を行い、エンジンと共に身近な例として日本の零戦52型を参考にして造形を行ったため、伊製ゼロともいうべき機体を半年という短期間ででっち上げる事に成功したのである。そのうえで、量産しやすい空冷エンジンとして栄エンジンのベンチマーキングも行っており、アクィラ航空隊の錬成と運用試験の為に機材を在伊日本艦隊に提供するだけでなく(運用は日本人パイロット、イタリア人パイロット双方が行った)、後にRe.2004などの航空機への採用を促し、日製航空機をイタリアが導入するにあたってのエポックメイキングとしても特筆される結果を残すこととなった。


カプロニ・ヴィッツオーラF.6ZⅡ(Zeta搭載予定機を改装してZeroにしたためこの名称となった)


全長:9.1 m

全幅:10.35 m

全高:3.15 m

全備重量:2.5t

武装:4 × 12.7 mm (0.5 in) ブレダSAFAT機関銃

最大速度:545km/h

生産機数15機+30機(本生産分)

航続距離:1200km+全速30分



 突然に現れた零戦に似て零戦より多少小型な本機はその由来によりZⅡと呼ばれるよりは、その日本機譲りの高機動性と由来からカプロニの幽霊、あるいは幽霊鹿チェルヴォ・ファンタズマ(カプローニは鹿の意も含むため)と敵味方から呼ばれる事が多かったと言う

多聞さんところの架空戦記大会に取り急ぎ参加したものでする


でっちあげにもほどがある!w

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