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ルートi「ある占い師の話」

始まりはただの正義感だった。

他人の心が見えた。

他人の未来が見えた。

男はその能力を使って人助けを行おうとした。

1番初めに救ったのは小さな小さな男の子。

車とぶつかる未来が見えたから、

道路に転がっていったボールを追いかけて飛び出そうとした

男の子の手を掴んで未来を変えた。

その時、男は知った。

未来は変えられると。


未来は、変えられる。

だが、それは、未来を予測、もしくは予知していてこそ

使える言葉だ。

男の子を助け、母親から礼を言われたその日から、

男は自身を「占い師」と名乗り、

自身の能力を「未来視」と名付け、

人の悲しい未来を変えるべく行動しだした。


ある日のこと。

男は未来をみた。

自分の力では絶対に救うことのできない未来を。

それは中学、あるいは高校生の少女だった。

その少女はそのうち死ぬ。

自分はその未来を変えられない。

男は、少女の心の中にいた、恋人の少年に助けを求めた。

そして、未来を変えた。

この日、男は人を頼ることも、よりよい未来には必要だと知った。


順調だった。

各地を旅し、たくさんの人を救った。

しかし、男の人生はある日を境に狂っていった。


その日、男は失敗した。

未来を変えられなかったか、より酷いモノにしてしまったか、

今となっては覚えていないが、

とにかく、男は失敗した。

そして、失敗と同時に知ってしまった。

未来を変えられず、愛する我が子が死に、

絶望し大声で泣く父親を見て、

自分の心が生まれて初めてと言っていい程の

悦び、快感を得ていることを知ってしまった。

自分はそういう人間だったのだ。

他人の心からの絶望が、悲劇が、大好物な、そんな人間だったのだ。

男はそれをしり、そんな自分をあっさりと受け入れた。


それからだった。男が「竜の力」に目覚めたのは。


暑い夏の日のこと。

男が見たのは1人の少女。

この子の心に1番近しいのは誰か、

どうすれば酷い悲劇が生まれるのか、

いつもように考えながらその子の心を覗き、未来を見た。

だが・・・

これは一体どういうことなのか、

どのような方法を仮定しても、少女の未来は変わらない。

1人の少年が助けにきてそこから先が分からない。

未来が見えないことは初めてだった。

恐ろしかった。

それ以上に、その少年が許せなかった。

少年の、絶望に歪む顔が見たかった。

だから男は決めた。


絶対にこの未来を変えてみせると。


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