ルートC「偶然の出来事」
明累が言った紫音ちゃんの死ぬという日の1日前。
僕は偶然にも紫音ちゃんに会ってしまった。
どこにでもありそうな近所のスーパーの食品コーナーにて。
「お、今日鶏肉半額じゃん、スーパーのチラシにそんなこと
書いてたっけかな?」
鶏肉のパックに手を伸ばすと、
「あ」
「あ」
もう1つの手が同じパックを掴む。
「すいません」と手を放して横をみると、
「あ」
「あ」
紫音ちゃんだった。
まさか同じ鶏肉のパックに手を伸ばすとは思わなかった。
別にこれが売れ残った最後の1個ってワケじゃないのに。
「火差君・・・?」
「やあ、紫音ちゃん、こんなところで会うなんて珍しいことも
あるもんだね。運命を感じるよ」
「・・・変なの」
あ、笑った。笑うと結構可愛いな。
強きな顔とは逆に性格は大人しいカンジだし。
「紫音ちゃんも晩御飯の食糧調達?」
とりあえず話を繋げていかないと・・・。
「うん、ウチは両親が共に料理下手だから、私が作らないと・・・」
「そりゃ珍しいね、どっちかが下手ならまだしも・・・」
「姉と弟基本的に料理しないから上手いのかどうか分からないし、
私が作らないと家庭が崩壊しかねないからね」
「すごい家庭だそりゃ・・・紫音ちゃんが熱でもだしたら
家庭崩壊するかもじゃないか・・・」
「そうかもね」
紫音ちゃんは困ったように笑った。
あれ?なんか結構いい雰囲気になってきてる?
一緒に買い物して、一緒に帰った。
紫音ちゃんの家、僕の通学路の途中にあったのか・・・。
知らなかったなあ・・・。
部屋に戻って、少し、考える。
「明日・・・かあ・・・」
明日、紫音ちゃんのために頑張ってみようかな、と、
少しだけ、思った。