第4章 廃病院・・・
『それにしても・・・この病院の経営者って、何でこんな所に病院なんて建てたんだ?ここじゃ、すぐに潰れるだろ・・・』
『・・・確かにな・・・』
今、俺達がいる場所は・・・山の中・・・それも、かなり山の奥の方に入っていった所だ。
病院があると言う事で、さすがに道は舗装されていたものの・・・こんな山奥に患者がやってくるとは到底思えない・・・
『・・・って、こんな所で病院眺めてたって面白くないから、さっさと中に入るぞ』
『・・・あぁ・・・・・・』
俺は、この時この空間には場違いな「ある違和感」を感じていたのだが・・・
井上が、もう病院に向かって歩き始めていた為、話を切り出せずに病院の中に入って行く事になった・・・
俺は、井上の後を追って病院の中に入って行ったのだが・・・俺は、その廃病院の中を見て、さらに別の違和感が出て来た・・・
『・・・なぁ?井上?ここって「廃病院』なんだよな?』
『あ、あぁ・・・そのはずなんだけど・・・』
この廃病院の中は驚く程、綺麗だったのだ・・・
整然と並べられている椅子・・・
ゴミどころか、ほこり一つ落ちていない床・・・
受付は今にも、看護婦さんが顔を出してきそうな雰囲気さえある・・・
そう、まるで昨日まで人がいた病院から、急に人がいなくなったかと思わせるような・・・
『・・・確か、ここ随分前に経営不振か何かで、つぶれてるはずなんだけど・・・』
俺達は、疑問を抱きながらも廃病院の中を見て回る事にした・・・
病室・・・
手術室・・・
霊安室・・・
肝試しで行くであろう全ての場所に行ったが・・・
中が綺麗だった為か、そんなに恐怖心は出なかった。
『なんか、期待はずれだったな〜』
『確かにな。もうちょっと、落書きとかあれば雰囲気出るんだろ〜けど』
俺達が、そんな会話を交わしながら歩いていると・・・
俺は、急に外で感じていた違和感の事を思い出し、井上に話してみる事にした・・・
『あ、そうだ!なぁ、井上?
今、この場所にいるのって俺達だけなんだよな?』
『ん?まぁ。そりゃそうだろ。他にも誰か来てんのか?』
『いや。何か、外に自転車とかバイクが何台か停めてあったからさ・・・
俺達意外にも誰か来てんのかな・・・って』
『あ〜。じゃあ、誰か先約いるのかもな〜。
・・・ってか、そろそろ帰るか?もう大体の所は見終わったしな』
『あぁ。そうだな。それより、井上?
お前、帰り道分かるか?』
『・・・いや。』
この、廃病院は何故か迷路のような作りになっていた為、俺達は帰り道が分からなくなっていたのだが・・・
歩いていれば、そのうち入り口に着くだろ。と言う事で、俺達は廃病院内を適当に歩き始めた・・・
あれから、一体どれだけ時間が経っただろう・・・
俺は、歩き過ぎたせいか段々、足の裏が痛くなって来ていた・・・
『・・・なぁ?俺達、一体 何時間歩いてんだ?』
『・・・多分、最低でも1,2時間は歩いてるな・・・』
『・・・・・・・って、ここってさっきも来なかったか?』
『・・・あっ。・・・確かに・・・さっきもここ通ったな・・・』
俺は、井上のその台詞で完全に迷ってしまった、という事を理解した・・・
『はぁ・・・仕方ないか。とりあえず、ここに何か目印になる用な物を置いて行って、俺達がまたこの場所に来るのかどうか確かめるぞ。話はそれからだ。』
『そうだな・・・』
そう言うと、井上は自分が着ていたシャツを脱いで、床に無造作に置いた。
ちなみに井上は、Tシャツの上に半そでのシャツを重ね着していたので、今はTシャツだけだ。
俺達は、また歩き始めた・・・
しかし、2,30分程歩いた頃・・・井上が脱いで床に置いていた、シャツが目に入って来た・・・
『・・・嘘だろ・・・?』
『・・・・・・・』
俺達は、その事実に落胆していたのだが・・・
俺は、一つおかしな事に気付いた・・・
井上は、シャツを乱雑に脱ぎ捨てる。という感じで床に置いていたはずなのだが・・・
今は、丁寧に折りたたまれている・・・
俺は、気が付くといつの間にか、そのシャツに近づいていたのだが・・・そこで、俺はこのシャツに近づいた事を後悔する事になった・・・
『・・・い、井上・・・』
『・・・ん?なんだ・・・』
『ちょっと、これ見てくれ・・・』
俺は、そう言うと井上の脱ぎ捨てたシャツを指差した・・・
『・・・っ!?』
『・・・・・・・なぁ、井上。これって、どういう意味なんだと思う・・・?』
『・・・そのままだろ・・・・・・』
俺達が驚いているのは、床の上にある井上の白い生地のシャツに・・・
赤い色である文字が書かれていたからだ・・・
その文字とは・・・
『ニゲラレナイヨ』
という物だった・・・