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レベル1(MAX)の調合師〜レベルアップは無理なので、ドーピングで成り上がります〜

作者: 木戸陣之助
掲載日:2026/04/22

一部曖昧な描写を追加しました。

「荷物が無くなって、楽になったぜ」

「あーあー。生きてる分、手間と暇がかかり過ぎるからなあ」

「惚れ惚れするタイミングの足切りですぜ、アニキぃ!!」

「そうだろお。あの野郎、ルーキーって言ってたから日の目見させてやったのによぉ……てんで使えねえ」


 頭上から声が聞こえる。嫌というほど鮮明な声だ。

 そして、俺は奴らの声を知っている。


「トラップチェックがてらに、ゴミ掃除、と。実にスマートな手腕だな」

「アニキがやっぱ一番でせえ!!」

「おいおい、俺たちの旅は終わってねえぞお、気ぃ引き締めろぉ。それに、お家に帰るまでが冒険って言うだろお?」

「そうだな。まだ終わってない」

「アニキィ、そのクールな立ち回りにオイラは涙が止まらねえっすう!!」

「ま、帰れずにあの世行き決定のバカもいるけどなあ!?」


 ゲラゲラと小汚い笑い声だ、そう思った。

 よくある話だ。固定パーティに新参で入ったルーキーが、冒険の為の人柱にされるのは。


 ダンジョンに眠る宝を手に入れ、食い扶持を得るためにこの魔境にやって来た俺は、丁度空きが出来たパーティの助っ人として行動を共にしていた。

 見つけた宝は山分け、破格の条件だった。飢えに飢えていた俺には、喉から手が出るほどうまい話だった。しかし、蓋を開けてみれば今に至る。


「……しくじった」


 俺ことデレク・キルシュタインがそのルーキーであり、たった今、最下層を目前にして死の淵に居た。

 無常にも、自分の状態を可視化出来るステータスビューが、現状を鮮明に数値化していた。


デレク・キルシュタイン レベル1(MAX)

体力:3 / 100

SPスキルポイント: 20 / 100

STR(力):15

INT(知性):30

SPD(速さ):25

LUK(運):4

ステータス:瀕死

スキル:調合 レベル1(MAX)


「痛てえ、ゴホッ」


 何メートル落ちたかも分からない。

 レベル15のアイツ等だったら、基礎ステータス軒並み100超えで余裕だろうが、生憎俺はレベル1から全く成長しない。

 ひとつ言えるのは、頭上の奴らは落とし穴に突き落として、その場から離れずに笑っているということ。


「……性根が腐りすぎてんだよ、せめて置き去りにしてくれりゃ良かったのに」


 とはいえ、もう遅い。

 地中深くに落とされた俺の体はボロボロだった。足は感覚が無いし、息をすれば激痛が走る。口からも血の味が消えない。せいぜい右手くらいか、動かすと泣きたくなるくらいに痛みは増すが。

 真っ暗闇で見えないが、瓦礫に埋もれた可能性が高い。お世辞にも外に出るのは無理だろう。


「じゃあなー、デレクぅ。せいぜいあの世でママに会えると良いなぁ!?」

「これもまた弱者の宿命。恨むなよ、当然そんな筋合いもないが」

「お宝は三人で山分けしちゃうもんねえ!! 当然お前にはやらないよーん!! じゃ、モンスターと仲良くねえーん!!」


 ああ、声が小さくなっていく。

 違う、意識が遠くなってきたのか。


「このまま、終わるのか?」


 母ちゃん。俺、母ちゃんの分まで長生きしたかった。だから、プライドも全部捨てて金持ちに媚び売ったり、よくも知らねえ奴らを引き立てて来た。

 でも、貧乏人ってのは、結局上に使い捨てられる運命なのかもな。


「……そう思い続けて、何年経った」


 文字通り地獄のような日々だった。

 人のプライドを満たすというのは、存外反吐が出るものばかりだった。

 ペットの代わりと言われ、残飯を餌にした。

 働き口も無いから、幸せそうなヤツを睨むしか出来なかった。

 そんな目付きが気に入らない奴らは、ここぞとばかりに俺を殴り倒した。そして、俺が泣くのを見て楽しそうに笑ったんだ。


 俺は幸せになりたい。普通の生活を送りたい。

 しかし、それを得る為の道はあまりに遠過ぎる。


「まだ、終わってない」


 そう、終わりじゃない。

 意識を手放さない限り、俺は生き続けられる。


『スキル:調合を発動するには、二種類の素材が必要です。発動しますか?』


「この石と、血で……錬成っ」


『スキル:調合により、アイテムが錬成されました』


 なけなしの力で生み出したのは一粒の錠剤。右の掌にぽつんと肌触りを感じる。激痛で気が狂いそうになりながら、それを口元にまで持ってくる。

 十五歳になれば、人は成人して特殊な力を神から授けられる。人は火を吹けるようになるし、水を操れるようになる。雷も落とせる。

 しかし、得られる能力は一種のみ。

 俺の能力は、この薬を作ること。ただそれだけ。


「はあ、はあ、はあ……っ」


 錠剤を飲み込んだ。すると、身体中で強烈な熱が暴れ回り、見る見る失った感覚を取り戻す。


『アイテム、超人薬を使用。使用者のステータスが一時的に向上します。但し、副作用が発生しますのでご注意ください』


「お、おおッ……!!」


 力が、漲る。

 人の理から外れた圧倒的な力が全身を駆け巡る。それに追随するように、ステータスビューに変化が現れた。


デレク・キルシュタイン レベル1(MAX)

体力:2/ 100

SPスキルポイント: 15 / 100

STR(力):3375

INT(知性):30

SPD(速さ):15625

LUK(運):4

ステータス:人体損壊、超回復、硬化、不死

スキル:調合 レベル1(MAX)


 そのまま俺は立ち上がり、まとわりつく障害を力尽くで払い除ける。


「ウオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


 どんな姿をしているか、分からない。

 俺の手の内を知ってる奴は、こぞって俺を化け物と呼んだ。体はオークよりも膨れ上がり、着ていた服なんてぶち破って筋肉が躍動する。


 俺が作ったのは、超人薬。

 無類の力と心肺機能、再生力を手に入れる。

 副作用は、効果が切れてしまえば、身動きが取れずに一週間飢えと苦痛に耐え続けるハメになること。

 死なない為の薬故に、死ねなくなる。

 最低のゾンビ製造機だ。


「それでもっ」


 生きられるなら、安いものだ。


「飛べエエエエエエエエエエエエエエッ!!」


 脚力で強引に足場を蹴る。その勢いで、体はあっという間に地表へと辿り着いた。

 そして、そこには小汚い格好をした冒険者三名が呆気に取られた顔で俺を凝視していた。


「オマエラ、オレヲミタナ」

「は? はあああああ? だ、誰だお前……え」

「アニキ? あ、あにきの腹に穴がっ。なんでええたええ、えぐぇっ」

「俺は無実だ、見逃すのが道理だ。元から協力するつもりだったんだ。だからその拳を下ろして、ぎえ」

「ザンネン」


 手元が赤く染まってる、誰の血なんだろうな。

 まあ、誰でも良いか。


 残り時間は十秒もない。そして、運がいいことに三人がこじ開けたであろう両開きの扉の奥には、宝石で装飾された箱が鎮座していた。


「タカラハ、コレカ」


 トラップがあるってことは、隠したい何かがあるってことだもんな。ハズレは無いことを祈ろう、急ぎ回収する。とにかく時間がない。


「ア、ガッ。ガアアアアアアアアアアッ」


 全力で跳躍をすると、頭上の壁を何枚も突き破った。ダンジョンは一律、地下十層と決まっている。もうしばらくすれば、地上に辿り着く。

 そして、最後の壁に穴を開けた時、光が俺を照らした。


「ぐっ……」


 辿り着いたのは砂漠のど真ん中、らしき場所だった。熱砂が体を焼き付ける。宝は無事だ、駄目になったのは俺の体だけだ。四肢が変な方向に曲がっている。


「……間に合ったな」


 後は一週間痛みと飢えに耐えるだけ。

 生まれて来たことを何度も後悔する時間だけど、生きられたのなら安いコストだ。


「せいぜい、何にも会わないことを祈る」


 こうして毎日生きている。

 命を投げ打つ真似をして、無理矢理体をボロボロにして、窮地を乗り越える。そんな生き方に意味があるかは分からない。

 それでも俺は、母ちゃんとの約束を果たす為に今日も生き続ける。

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