表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

男ならドラクエのセーブデータを守れ!

スーパーに入ると冷房が良く効いていた。



だがその冷房の冷気が僕の歯茎を刺激し、痛みを与えたので僕は「アッーーーー!!」という叫び声を上げタップダンスらしきものを踊ったような踊らなかったようなところまで記憶がある。しかし、そこから先の記憶が全くない。昔のドラクエのセーブデータを思わせる記憶の飛び方だった。



スーパーから帰った後に美弥音に話を聞くと、タップダンス的なものを踊り終えると周囲から拍手が沸き起こり「こいつならプロになれる!」的な盛り上がりを周囲の買い物客がしていたらしい。

なんとか買い物客を掻き分け、僕に声をかけたのだが「ひひ、ひひっひ」とかなんとか意味くそわからん声を漏らしていたので一発殴って意識を飛ばした後、玉ねぎを即座に買い、店から自宅まで僕をひこずって帰ってきたそうだ。



なるほど! どうりで歯茎の腫れは引くどころか悪化し、踵だけ大佐の指パッチンを受けた後みたいに黒こげになっているわけだ!!



「って、飛ばす必要なくね!?」

「だって目が死んでたし。それにあのままだと絶対危なかったし」

「危ないってどういう―――」

「お父さんみたいになるってこと」


ああ、そうか!!

それなら美弥音が正しい。あのデスビームが気合で出せると信じ込んでいるような馬鹿には絶対になりたくない!! しかも、かめはめ波まで気合で出せると信じてやがる! 気合で出せるのは太陽拳までだよね!!



「そうだな。しかたないな。今回は特別に許してやるよまったく」

「あの後、真弥さんも巻き込んだんだからね。ちゃんと謝っといてよ」

「真弥も? そいつは悪いことしたなぁ……」

「……本当にね」

「はい?」



美弥音はすごく「ハぁー。まったくこいつは、やれやれ」って顔をして言ったので少し心配になった。



「もしかしてその後も僕がなにか変なことを……?」

「変なことはいつもしてるでしょ。ご飯までまだ時間がかかるから待ってろってお母さんが。おとなしくしててよね」



そういうと美弥音は自室へと消えていった。

……うーん。なんだか頭がボーッしている。

記憶はないし、歯茎はすごく痛いし。財布が軽くなってる気がするし。



……まあ、問題ないか☆ノープログレム!

とにかく部屋に戻って「ファイナルファンタジー」でもしよう!!

うん! そうしよう!!



その後、僕は自室に戻りファイナルファンタジー、通称FFの主人公のレベル上げに没頭した。

そして、レベル上げをしながらよく考えると色々なことに気がついた。

例えば、チョコボはスライムと同じような立ち位置だとか、バハムートは本で「アラブの伝承に出てくる大きな魚」と記されていたことや、歯医者には行かずに僕の歯茎は腫れるがままになっていたりとかだ。



そんな考えに没頭しているとすぐに昼食は出来上がったので僕はFFをやめた。

そして歯茎の腫れが全く引いていないのでご飯が食べれなかった。激痛で。



なので昼食はプリン五つというなんとも豪勢な昼食となった。

しかもそのプリンの消費期限がすべて四ヶ月前のものだったがそんなことは気にしない。知ったことではない。むしろ滅べ。



案の定、腹を壊してトイレに入ったまま「負けないで」を現在進行形で熱唱している僕はさきほどから何度か「黙って」と妹から最高に短いクレームを受けながらも激痛と格闘している。

もう、死ぬかもしれない。ケツからなにか大事なものが抜け落ちて僕は死んでしまうかもしれない。もしくは、ケツの割れ目から真っ二つに体が裂けてしまうかもしれない。



ようやくケツと腹の激痛から開放され、僕はトイレを出た。

ふぅ、死ぬかと思ったぜ☆つーか多分二回は死んだな! こうやって生きているのは奇跡に違いない!



「お兄ちゃん」

「ん? どうした? 僕が生きて帰ってきたのがそんなにうれしいのか? っていうかその手なに?」

「だからお金」

「はい?」



僕はこの妹がなにを言っているのかわからなかった。あまりにも唐突だったこともあるがなぜ金を渡さなければいけないんだ? まさか、新手のかつあげか!?

このトトロにでてくる「かん太」を思わせる手の差し出し方は今にでも「ん。ん!」と迫ってきそうだ。



「もしかしてお前かん太……いや、華ン多の仲間か!?」

「ひこずって帰ってくるの大変だったんだからね。その分のお金」

「葉意?」


僕はこの妹がなにを言っているのかわからなかった。あまりにも唐突だったこともあるがなぜ金を渡さなければいけないんだ? まさか、新手のかつあげか!?

このトトロに――――



「お金」

「かん太ぁぁぁあああアッーーーーーーーー!!!!」


美弥音は僕が叫んでいるにも関わらず平手を放ってきた。それも歯茎にね。



「歯茎っがあああぁっぁぁ……!!」

「今度はちゃんともらうから覚悟しといてよ」



そういうと美弥音は暗闇に消えていった……。

アレ? 暗闇? こんなに家って暗いかったっけ? 今は、真昼のはずだぞ。

アレ? どんどん暗闇が広がってゆくぅぅぅ……どんどん、広がってぇぇ……暗闇が晴れたぞぉぉ……ここはお花畑かなぁぁぁ……うひへへへぃ……たぁのおしいぃなぁあ……たのぉしぃぞぉぉ……あれ、死んだおじいちゃんだぁ……こっちに手を振って……川の……向こうで……にっこりぃとぉ……今、そっちに行くからねぇ……待ってってってってって……。










ここって天国かなぁ……ま、いいやぁ☆

まだ主人公は生きています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ