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男なら股間と歯茎は守れ!

もし、何も知らない小学生がフリーザと戦いだした青年を見たらどう思う出ろう。

きっと「がんばれ!」とか「負けるな!」とか応援するだろう。

もしかするとビビッて声を出すことができないかもしれない。



なので、青年を怒鳴りつけさっさとその場を後にする「ファイナルファンタジー」の「ギルガメッシュ」みたいな堂々たる行動をただの少女がするはずないのである。

っていうかできないはずなのである。普通。



しかし、我が妹はやってみせた。そのギルガメッシュのような堂々たる行動を。

我が妹はすごいなぁ。素手でギルガメッシュを撲殺できるかもしれない。

スコールだってジタンだってクラウドだってびっくりさ!



僕は妹がこの家を出てから間もなくまたフリーザとの戦闘を開始した。

コロネを手に入れたんだからいいじゃないか! そう思うだろう。

しかし、フリーザをそうあまくはない。



二回からすぐさま舞い戻ってくると「エクソシスト!」っと叫ぶとブリッジをし、その体勢のままこちらに向かってきた。

僕はそれを一瞥し自室へ向かおうとしたのだが、それを阻止すべくフリーザはブリッジの姿勢のまま突進してくる。



ここから「第二次フリーザ対戦」が始まったのだ。そして僕は「スーパーロボット対戦」が明日も無事できるよう祈ったのだった。




          *******************



久慈くじ 美弥音みやねは自宅の目の前で立っていた。

勿論、ただ立っているのではない。思い出したからだ。



そうだ、たまねぎ買ってない……。

どうしよう。今からスーパーまで戻るのも面倒だしなぁ。

謝ったらお母さん、許してくれるかな? 許してくれるよね。きっと。



そう思い至ったので玄関から自宅に入ろうとするのだが、なぜか中からもの凄い効果音と共に兄の「かぁめぇはぁめぇぇぇ……波ぁぁぁぁ!!!」という掛け声と「ぬうおぉぉぉ!!!」という父の声が聞こえた。



またか……。

また馬鹿なことしてるのかあの二人は……。



玄関から入るとそこには今にもデスビームを放ちそうな父の姿と壁際で小さくうずくまるようにして置いてあるダンボールがあった。

父は「お前の貧弱なビームなど効かんわ!」というと高らかに笑いを残し、奥へと消えていった。

そしてダンボールから兄が姿を現し、「く、強い。あの時よりも格段と強くなっている。あやつをここから出してはならん!!」とか意味不明なことを呟いていた。



「おお、帰ってきたのか。とにかくまずはあのフリーザを倒すことに専念しよう。ギルガメッシュを撲殺したお前ならいける。この町を救えるのは……」

「お兄ちゃんたち何してたの?」

「なにって、第二次フリーザ――――」



そこまで聞くと私は無言で拳を兄の頬にぶつけ玄関を後にした。



           ****************



女の子=平手。男=グーってイメージがあるけどそれは違う。

現にこうやってぶん殴られたわけで。妹に。

それにしても痛いなあ! あいつ指と指の間に小銭持ってたから当然か!

あれ? なんか歯茎が痛いなぁ。なんでだろう? ま、いっか!



僕はコロネを無事食べるには自室しかないと思ったので自室へ向かった。


自室へ戻ってみると、うん。

なんか荒らされてるんだよね。全体的に。

多分、親父がやったんだろうけども。

とりあえず、腹が減っては整理することすらできないのでコロネを食べることにしよう。

封を切って、コロネを口の中へ―――ってあれ? なんか口が腫れて動きにくいなぁ。

まあ、いっか。いただきま―――――。



「アッーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」



一体なんだ!? 口内に激痛が!!

しかも「ガリッ」っていう砂噛んだときみたいな効果音までしたぞ!!



「お兄ちゃん、うるさい」

「今、それどころじゃない!! 死ぬ!! 口が!!!」

「お兄ちゃん、口が腫れてるよ。もの凄く。なんかしたの?」

「わ、わからん。なぜこうなったんだ畜生! あ、奥歯折れてる。ああ、なるほど。ガリッっていう効果音は奥歯を噛んだ音か!!」

「病院行ったら?」

「そうだなって、ん? 待てよ? これお前が殴ったからなったんだろ! 100円で!!」

「昔100円のこと馬鹿にしたからじゃない?」

「してねーし!! あれ? したっけ? したかも」

「ほらね。とりあえずティッシュ詰めといたら」



ち、畜生!! こいつは!!

人の歯を折っといてこんなにも平気でいられるのか!!



「とりあえず僕の歯を返せ!!」

「自分で生やして」



妹は部屋へと消えていった……。

こいつぁやべぇぜ、旦那。あれ? 旦那って誰だ?

そんなことはどうでもいい! はやく、はやく歯医者へ!!



         *******************



30分後。僕は妹と並んでスーパーへ向かっていた。

なぜ歯医者には行かないのかって? 勿論、理由あってのことだ。



折れた歯と腫れた頬を母に見せると「とりあえず、たまねぎ買ってきてくれない?」となんとも場違いな台詞を吐いたので僕が講義しようとすると妹が現れ「そうそう、たまねぎ忘れちゃったの。ごめんねお母さん」と僕を完全無視した会話に突入したので僕が再び講義しようとすると「まだ、お昼には時間があるからこれからゆうに買ってきてもらうことにしたの」と母までもが完全無視し、僕が三度みたび講義しようとすると「私が買ってくるよ。お兄ちゃんに買い物させたらろくな物買ってこないよ」と三回目の講義を中断され「もう、いいや。僕なんか死ねばいい」とすねていたところに「お兄ちゃん、歯医者にもよってあげるからついて来て」と天使の囁きにも聞こえなくもない妹の声が聞こえこうなったわけである。



「お兄ちゃん、頼むから変なことしないでよ」

「変なことなんかしない」

「いつもしてるでしょ」

「あれは親父が……」

「馬鹿いってないでしっかり歩いてよ。歩き方おかしいよ」



口の中が痛いからに決まってるだろう。歩くたびにガンガン響くんだよ、口に。

っていうか誰がこんな歩き方にしたと思ってんだ。



「だいたい、こうなったのはお前の―――」

「あれ? あそこにいるの真弥さんじゃない?」



この野郎。つーか畜生。人の話を聞いちゃいねー。



「お兄ちゃん、聞いてる?」

「ん? 何が? つーかお前は俺の話を聞いてくれ」

「ほら、あれ。真弥まやさんじゃない?」



よくよく目を凝らしてみると、確かにありゃ真弥か?

セミロングの髪に少し変わったリボンをしているところなど真弥そっくりなのだが、これだけで真弥と言い切るのは難しい。

ちなみに真弥とは小学生のころからの幼馴染。結構仲がいい。性格は元気って感じ。



「ちょっと行ってみるね」

「どこに?」



当然の如く無視いて真弥と思われる人物に近ずいていく。畜生、話を聞け。

美弥音が追いつき、真弥と思われる人物に話しかけている。

そして、振り向いた……! さあ、どうだ! 真弥か! それとも別人か!

できれば別人であってくれ! あいつと会うとろくなことがないからな!



小学生のころだって道で歩いている真弥を見つけ近寄ると、どこぞの格闘家のような回し蹴りを股間にくらい道にうずくまった記憶がある。

その後、親切なおばさんが救急車を呼ぼうとしたのを必死で止めたのも記憶がある。うずくまったままで。後々なぜ突然蹴ったのかを聞くと「気分で」だった。



……真弥だった。振り返ったのは真弥だった。

ああ、僕は今日死ぬのだろうか? 教えてくれ神様。もし死ぬのなら死ぬ前にまだ一周もしていないドラクエをクリアしたい。小さなメダルを集めたい。死ぬ前に。



「悠じゃんか。奇遇じゃんか」



真弥がこちらに近ずいてくる。もうすぐ死んでしまうのか僕は。



「ド、ドラクエをさせてくれ」

「はい?」

「頼む。まだメラを覚えたばかりなんだ。こんなところで死んでたまるか畜生!」



真弥は気軽に話しかけてくれるが僕にそんな余裕はない。



「死ぬんだろう! どうせ死ぬんだからドラクエくらい!」

「お兄ちゃん、落ち着け!!」



美弥音がこっちに向かいつつ全力で飛んでくる。

そして美弥音のとび蹴りをもろで股間にくらう。あ、死んだな。股間が。



「さよなら、現世。こんにちわ、来世……」

「ミヤ、こいつ頭打ったの?」

「さぁ、わかりませんけど。いつもこんな感じだったでしょう?」

「まあ、確かに学校でもパッパラパーだったけどねぇ」

「うう……、貴様ら。僕のことを異常者扱いしやがって……」

「あ、悠立てる? 手貸そうか?」

「悪い……」



僕は股間を押さえながらなんとか起き上がった。

美弥音の蹴りがこんなにも上達していたとは……。



「あんた、本当に元気だねぇ……」

「真弥もだろ」

「ミヤも元気だった?」

「元気でしたよ」



そうだ。こいつは美弥音のことをミヤと呼ぶんだった。

っていうかなんでここにいるんだろうか?



「なんで―――」

「真弥さんはどこかお出かけですか?」



なんでだろう? 何故俺には妹よりも多く話してはいけないのだろう。

男女差別だよねこんなの。いや違うけど。



「ちょっとスーパーにね」

「じゃ、私たちと一緒ですね。せっかくですから一緒にどうですか?」

「へぇ。ミヤたちも買い物かぁ。じゃ、せっかくだし一緒に行こうか」

「はい。……お兄ちゃん、早く」



なんだろう? こいつらが会ってから僕を無視しつつ速いペースで話が進んでいるぞ。

まあ、いいよな。別に。っていうか股間が痛い。もの凄い。



「あれ? 悠を口腫れてない?」



そういいながら真弥は僕の腫れた頬をツンツンと―――――。



「アッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

「あ、ごめん。そんなに痛かった?」

「痛い! もの凄く! ツンツンっていうかドスドスきたぞ!!」

「すいません。うるさい兄で」

「いいのよ。ミヤは悪くない」



こいつ……!! 人の歯茎を突き刺したくせにこんなにも平然としていられるのか!?

こっちは激痛に見舞われているというのに!!



「さぁ、着いたぞぉ」

「お兄ちゃん、歩き方直してよ」

「……もうだめかもしんない」



そんなこんなでスーパーに着いた……。痛い……。歯茎も股間も。 

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