男なら段ボールに隠れろ!
タイトルは特に意味はないので気にしないでください。
「んぱあぁぁぁぁぁぁ!!」
とりあえず意味のない雄叫びをあげながら、僕こと久慈 悠はベッドから跳ね起きた。
勿論だが起きたのは自室であり、デスビームを放ち続ける親父の姿はどこにもなかった。ああ、畜生。僕はいつからこんなに意味の分からない夢を見るようになったんだろうか。
そもそも親父がいい歳してスーパーサイヤ人になるとかなんとか言い始めなければ僕はこんな夢を見なくて済んだはずだ。
………まあ、いい。早く朝食を済ませねば。学校に遅れる。
ん、あれ?待てよ?今日土曜じゃん。学校ないじゃん。
………まあ、いい。早く朝食を済ませねば。
朝食を済ますため台所に入ると、朝っぱらから無駄にテンションが高く「見た感じはおっさんなのに頭の中はのび太君だよね」と妹言われたばかりか僕の夢に出てきてデスビームを放ってきたフリーザ――――いや、僕の親父がいた。
…………そうだな。まず一番最初に思ったことは「面倒くせっ!」だな。
このダメ親父に見つかると相当面倒くさい。昔、朝起きてきただけで「俺は勇者として王国に認められ塔に閉じこめられた姫を救うため火を吹くドラゴンを倒し――――」と約30分間ほど続く長編小説のような夢の話を延々と聞かされ学校に遅れたことがある。
「朝の親父=見つかったら束縛=BADENDだぜ☆」という三段構成が僕の中にある。
だからこそ見つかるわけにはいかない。絶対にBADENDだぜ☆は避けねば。
僕は親父の視界に入らないよう注意して台所に入るとテーブルの下に潜り込んだ。
ここまではOK。さて、問題はここからだ。
目標(朝食)のチョココロネはここから約1メートル先の戸棚にしまってある。
そのすぐ隣には魔女の宅急便のエンディング「やさしさに包まれたなら」を口ずさみつつも今にもデスビームを放たんとするほどの気迫を体に帯びた親父がいる。
……どうする。作戦は三つほどある。だがどれも成功率は低いぞ……。
①ダッシュ!→そしてコロネを奪取!→そしてダッシュ!
②前転!→突進!→すまん!親父!→逃走
③クリリンのことかぁぁぁ!→元気玉ぁぁ!→コ☆ロ☆ネ
……だめだ。朝だからろくな案が浮かばない。朝だからね。
③はもう元気玉で親父消しちゃってんじゃん。殺っちゃってんじゃん。
くそ!このままじゃ朝食にありつけない!どうすれば……。
………ん。これは……!!これを使えば………!!!
僕はずっと踏んでいた「あるアイテム」を目にし、朝食にありつけることを確信した。
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「じゃ、お母さん。行ってくるね」
「気をつけなさいよ」
私、久慈 美弥音は今からお買い物に行ってきます。
さてここで問題です。
Q.今、買い物に行こうとしている私が一番「気になること」とは一体なんでしょう?
お金?それとも服装?
残念。どれも違います。
正解は―――――
「美弥音!お前、あんまりこっち見るな!今すぐあっちいけ!このままじゃ、絶対に見つか――――。」
兄です。何故かテーブルの下にあったはずのダンボールに入り父さんへ―――いやパンの入っている戸棚に近ずこうとしている兄です。
「見つかるだろ!こっちに視線を送るな!っていうかなんだその冷たい目は!」
………なんでうちの男でもはこうも馬鹿なんだろうか?
これで見つからないと思っている兄も馬鹿だろうけど、それを見つけることのできないうちの親父も相当馬鹿だと思う。
「お兄ちゃん。朝から馬鹿なことしないでよ」
「ば……!おま……!」
お兄ちゃんはすっごい焦ってる。なんで?っていうかやめてよ、そんな馬鹿なことは。
しかも父さんは「悠が起きたのか!我が必殺を受けよ!!」とか叫んで二回にあがっていった。なんでだろう?なんでこうも馬鹿なんだろう?
お兄ちゃんはダンボールから出るとすばやく戸棚に近寄りコロネを手にしていた。
「やった!コロネGET!でかした美弥音!」
「お兄ちゃんなにしてたの?」
「そりゃ、コロネを手にするためにフリーザと熱いバトルを――」
「どうでもいいけど外でこんな馬鹿なことしないでよ!!変な噂流されて困るのはお母さんなんだからね!!」
私はそう言い放つと玄関へ向かった。
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あれ?怒鳴られた?なんで?っていうか僕はなにか悪いことをしたのか?フリーザと勇敢に戦ったはずだが……。ほめられてもいいよね、これって……。