今日の狩り目標! 朝の9時から深夜2時まで!
斧術――つまり、武器のスキルレベルが高ければ高いほど、上位の装備を持てるようになる。要求LVなし、なんて表記はユニークスキルらしく、現存する装備ではありえない表記であった。なので、そこは良い。
だが、肝心の性能がかなりひどい。
攻撃がたったの5。装備LV1の武器でも、20~30ぐらいまではあるのに、それすら下回る数字。
しかもそれ以外の項目は一切上がらず、特殊な効果もなし。
考えうる限りで、最低の武器といえた。
「でも「成長する」という言葉を信じて、使うしかないんだけどな」
他に強くなれる当てはない。
というわけで、ユニークスキル「∞ウェポン」を発動した。
「うおっ、待った。デカい」
右手に光が宿る。その光が弾けると、150センチほどのウォーアクスが姿を現し、手に握られていた。
重量感のある見た目だ。持ち手の部分は青く、真っ直ぐ伸びた先には銀色の広い斧刃がシンメトリーを作り上げている。先端には槍のような鋭い穂。そして斧刃の刃先は美しい銀色に輝いている。
全体的にどっしりと、それでいて細かいところにまで装飾がなされていて、派手なデザインだ。見た目だけはいっちょ前に、ラストダンジョンかなにかで手に入る最終武器に見える。ものすごく強そうで、圧力があった。
「かっこいいけど、現状、見かけ倒しだな……」
今の時点では、現存する武器の中で最弱。
だけど、ここから強くなってもらわないと困る。
「いくか。まずは戦おう。今日の目標は、深夜2時ぐらいまで。つまりここから、17時間ほぼぶっ通しの狩りだ。そのくらいやれば、ちっとはマシになるだろ」
その元社畜、セルフパワハラが激しい。
★
木陰に隠れつつ、様子を伺う。草原でぽよんぽよん、と呑気に弾みながら動く、全長40センチほどの紫色のスライムがぴたりと止まる。その場でなにかモゾモゾし始めた。花を食べている……というよりは、吸収しているのだ。それがスライムの食事ならしい。吸収した花の色にすぐ染まるらしいのだが……豆知識はどうでもよく。
「ちょうどいい。1匹か。やろう」
モゾモゾ中のスライムへ向けて、駆ける。
ステータス補正もあり、重たげな斧を両手で持っているにもかかわらず、青宮はアスリート並のスピードであった。
斧で一閃。しかしスライムは勢いよく跳ねて、青宮の攻撃を回避した。
そして大きく跳躍し、青宮の胸目掛けて体当たりする。
「ぐふっ!?」
スライムとは思えぬほどの重量感と衝撃。
ふっ飛ばされた青宮は、衝撃で後ろへゴロゴロと転がる。
さらにそこへ、スライムが追い打ちをかけるように追ってきた。
変形し、細長い腕のようなものを形成して、それをストレートの拳のように放つ。
武宮は斧を両手で持ち、柄の部分で攻撃を受け止めた。
「っ!!!」
がつん、という衝撃が両腕をしびれさせる。
しかしなんとか斧をぎゅっと握り、スライムへ目掛けて斧を振るう。後ろへ飛んだスライムの体を、鋭利な刃で切った。
飛び散る液体。しかしスライムは距離をとった状態で、戦闘態勢のままだ。
初心者向けのモンスター、スライム。
こちらのLVは3。しかしソロだと油断出来ない相手だ。
ぼよよよんっ! と再びスライムが勢いよく飛び出し、体当たり。
「早い――ぐほぅ!?」
またも胸に命中し、地面に転がった。
「クソが……!」
HP160/221
まだまだ、やれる。立ち上がった。
……脳裏に寝取られた彼女、泉の声がよみがえる。
彼女は後衛タイプだった。前衛で被ダメの多く、転がる青宮をよく笑っていた。「もう、頑張ってよ~」みたいなことを言いながら。
有島が被ダメした時は「え、大丈夫? 回復魔法かけるね」なんて言っていた。
「ちっ、あああああああっ、なんかムカついてきた!!!」
向かってきたスライムを、八つ当たり気味に思いっきり斧で一閃する。
怒りを乗せた攻撃は、鋭い動きであった。スライムの体を斬り、液体が飛ぶ。しかしまだ撃破には至らない。スライムは再び体当たりをした。
しかし今度は同じようにならない。
回避行動をとらず。青宮は同時に斧を振りかぶり、スライムを吹き飛ばした。
べちゃ、べちゃ! とスライムが転がり回る。ダメージが蓄積したのか、ぐぐぐ、と動きが鈍くなる。
そんな瀕死のスライムへ向けて、むしゃくしゃした青宮は……ストレスをぶちまけるかのように、何度も、何度も斧を打ちつけた。
「ざけんな! ビッチが! あんな男の、どこが、いいんだ、よ!!! おら、おらぁ!!!」
バンッ! バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!
最後に再び大きく振りかぶった。スライムはとっくに死んでいる。というかグチャグチャだ。嚙み終わったガムみたいになっている。
「――こんの、クソフリーターカップルがあああああああああああ!!!」
どごおおおおおおんっ!
地面に切れ込みを深く入れながら、斧を振った。
ぜえ、ぜえ、と肩で息をする。
「……いかん。こんなことで、無駄な体力を使っちゃいけない」
我に返りながら、息を整える。
とにかく今は時間が惜しい。
次の獲物を求め、青宮は歩き出した。




