スキルLV∞
ダンジョンへ通じる次元の歪み「ゲート」は日本に18カ所出現した。各次元の歪みは冒険者協会が保護し、支部の施設によって管理されている。
青宮が向かったのは、その支部の1つだ。
駅の近くに設立された、5階建てのビル。その最下層に受付と、ダンジョンへの扉である「ゲート」が常設で現れている。
バスを使えば通える範囲の近さなのだが、冒険者達も考えることは同じ。青宮の物件は相場よりもやや高めな家賃であった。
自動ドアを潜り、受付の若い女性の従業員にステータスを見せる。
「ユニークスキル、解放されたのですね。おめでとうございます」
青宮の顔を覚えているのか、手元のパソコンを打ち込みながら、そんなことを言われた。
「え。ああ、まぁ、はい……」
だが、なんとも言えないリアクションになる。
ユニークスキルの内容は確認していたので……本人としては、複雑な心境だ。
「スキルLVの表記が「∞」なんて、初めて見ました……EXは稀にあるんですけどね。前例、ないかもしれません」
「そうですか」
「きっとすごい力ですよ。応援しています。頑張ってくださいねっ」
「どうも……」
ほんわかとした雰囲気の、受付のお姉さんである。何故か応援されてしまった。
「昨日のことは大変だったと思います。冒険者協会からも、ホームページから通達の方がされています。現在、ギルドの方へ調査の要請が出ている状況なのですが……それでも、今日は1人でダンジョンへ?」
「そうですね」
昨日の事件は冒険者協会へ報告していた。協会の動きは早く、ホームページでは初心者エリアであるEランク帯へ注意喚起がなされている。はっきりと確認がとれていない案件なので、入場制限まではされていないものの、今の時点での低レベル冒険者の入場は非推薦となっていた。
「わかりました。青宮さんは真面目なので、頑張りすぎないように気を付けてくださいね」
「ありがとうございます」
(俺のなにを知っているって言うんだ……? まあ、いいけど)
疑問に思いつつ入場許可が下りたので、青宮は奥の大きな扉へ向かう。
受付をするのは、入場の履歴をデータで残すためだ。退場する時にも手続きをして、ダンジョンの出入りを協会がアーカイブとして残す、という段取りである。
そして扉の先にある大部屋へ。白い壁と白い床。その中央に、黒い空間の歪みが発生している。
その歪みへ手を触れる。システムの音が聞こえて来た。
『ダンジョンへ入場しますか?』
メニューで「入場」を選択すると、青宮の体は光に包まれる。
そして気がつくと、辺りには気持ちの良い朝の草原が広がっていた。
★
ワープポイントの近くにいると他のパーティーと鉢合わせたりするので、少し離れる。大きな木に背を預けつつ、メニューを開いた。
「気は進まないが、改めてステータスを確認するか」
青宮は今の時点での、己の強さを確認する。
青宮 翼 21歳 男
LV 3
HP 221
MP 68
攻撃 45
防御 30
魔力 43
精神 30
俊敏 28
スキル 斧術LV1 ∞ウェポンEX
平凡といったステータスであった。おおよその目安だが、LV3だとHP300、MPだと70、それ以外は50を超えると、その項目の将来は有望だ。青宮は1つもそういった項目がない。しかもひどいのが、斧が武器なのに前衛とも後衛とも言えない中途半端な分配なのだ。
「まるで業務をわかっていない上司が、現場ぐちゃぐちゃにしたかのような配置のステータスだ……おっと、嫌なことを思い出した。そして一番の問題は、こいつか」
ユニークスキル――「∞ウェポン」。
随分と仰々しい名前だ。しかしメニューでスキル詳細を見ると、その説明文はいたってシンプルである。
∞ウェポン LV∞
成長する武器「∞ウェポン」を装備する。
成長の条件などが記載されておらず、かなり不親切だ。
ただ、そうは言ってもユニークスキル。
しかも「成長」というキーワード。
極めつけは、レベル∞。
ここまでなら、なんだか期待をしてしまう。
しかしその期待は――∞ウェポンの性能画面へ移行すると、裏切られることになる。
∞ウェポンの詳細な武器性能は、こちらだ。
∞ウェポン
攻撃+5 要求斧術LVなし
冒険者「青宮 翼」以外装備不可である。




