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《第二章》第四節:モモスケ、沈黙を破るか?

健太の挑発は、ついに俺にまで及んだ。過去を蒸し返し、俺を「つまらない鳥」と罵る愚か者。俺は生まれて初めて、沈黙の誓いを破り、喋ることを考えた。だが、俺には俺の矜持がある。この状況を、俺は別の方法で打開する。

健太の挑発的な言葉が、資料館の静かな空間に響き渡った。真司の顔は怒りでこわばり、桃も困惑した表情で二人の間に立っている。この状況はまずい。俺のひねくれた頭脳が、瞬時に判断を下した。このままでは、せっかくの桃と真司の「遠足」が、最悪の思い出になってしまう。そして、何より、桃が傷つくかもしれない。


健太は、真司が何も言い返さないのをいいことに、さらに言葉を続けた。


「おや? 副社長さんは何も言わないのか? まあ、無理もないか。桃と僕の関係なんて、君には分からないだろうしね」


その言葉は、真司の心に深々と突き刺さるナイフのようだ。真司の拳は、完全に握りしめられている。俺は、彼の怒りが頂点に達しているのを感じ取った。だが、彼は言葉を発しない。彼の真面目で奥手な性格が、今、彼を縛り付けている。


その時だ。桃が、健太に向かって、少しだけ語気を強めた。


「健太さん、そういう言い方はやめてください。真司さんは、私にとって大切な仕事のパートナーです」


桃の言葉に、健太は一瞬、眉をひそめた。そして、真司は、桃の言葉に驚いたように彼女を見た。桃は、真司を守ろうとしている。その事実に、俺の心臓がトクンと鳴った。


だが、健太は引かない。彼は、嘲るような笑みを浮かべた。


「大切な仕事のパートナー、ねぇ。まさか、桃がそんなこと言うなんて。そういえば、モモスケは懐いてる? こいつ、全然俺に懐かなかったんだよ。まるで喋らないし。あんまり可愛くなかったから、結局手放しちゃったんだよね」


健太の視線が、桃の肩にいる俺に向けられた。俺は、健太のその言葉に、全身の羽毛が逆立つような感覚を覚えた。何を言っているんだ、こいつは。懐かない? 可愛くない? それは、お前が俺に向き合わなかっただけだろうが。それに、俺が喋らないのは、テメェなんかには聞かせてやる価値がないと判断したからだ。


俺は、生まれて初めて、喋ろうかと考えた。

この薄っぺらい男に、俺の矜持と、桃への忠誠心を、示してやりたい。

真司は、健太の言葉に、桃の肩にいる俺に目を向けた。彼の瞳には、俺への同情と、そして、健太への激しい怒りが宿っていた。


その時、健太が、俺を指さして、さらに言葉を吐き捨てた。


「あーあ、可哀想に。今も喋らないのか? 全くつまらない鳥だな」


その瞬間、俺の脳裏を一つの考えがよぎった。喋る。

いや、喋ってやる。

俺が喋れば、この場の空気は一変するだろう。

そして、この男は、驚きと同時に、自らの愚かさを知るだろう。

だが、俺はすぐにその考えを打ち消した。

俺は、喋らないと心に誓ったインコだ。

その誓いは、俺自身の矜持。

こんな薄っぺらい男のために、その誓いを破るわけにはいかない。


しかし、このままでは、桃と真司が健太の言葉に傷つけられる。

俺は、何か別の方法で、二人の助けになることはできないか、頭をフル回転させた。

俺のひねくれた純愛観察日記は、今、重大な岐路に立たされている。

俺の沈黙が、この状況を打開する鍵となるのか。

それとも、このひねくれたインコが、新たな一手を打つのか。

俺は、じっと、次の瞬間を待った。

危うく喋りそうになったぜ。しかし、俺の矜持は、そんな薄っぺらい男のために破るほど安くない。だが、このまま黙って見ているわけにはいかない。桃と真司のために、俺はこのひねくれた頭脳をフル回転させる。さて、次はどう出るか、見物だな。

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