表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『モモスケのひねくれ純愛観察日記』  作者: ちょいシン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/30

エピローグ:ひねくれインコが見た、本当の奇跡

どうも、モモスケだ。結婚式を終え、日常に戻った俺たち。すべてが順調に進む中、桃と真司から衝撃の真実を告げられたぜ。なんと、俺が喋っていたことを、彼らは知っていたらしい。このひねくれインコが最後に見た、本当の奇跡とは――。

ハワイでの結婚式から数日が経ち、桃と真司、そして俺は、日本へと戻ってきた。

「株式会社MOMO」のオフィスは、相変わらず活気に満ちている。従業員たちは、新婚旅行から帰ってきた二人に、改めて祝福の言葉を贈っていた。


桃と真司は、結婚式での幸せそうな笑顔をそのままに、日々の業務に励んでいた。

そして、以前にも増して、お互いを気遣い、支え合っている。

俺は、そんな二人を、桃の肩の上から、いつものように見守っていた。

俺のひねくれた純愛観察日記は、彼らの夫婦としての物語を、これからもずっと綴っていくのだろう。


ある日の夜。

会社での仕事を終え、アパートに戻ってきた桃と真司は、リビングでくつろいでいた。

俺は、ケージの中で、今日の観察記録を頭の中で反芻していた。

すると、桃が、そっと俺のケージに近づいてきた。


「ねぇ、モモスケ。今日、真司さんと話してたんだけどね……」


桃は、そう言って、俺の頭を優しく撫でた。その目は、少しだけいたずらっぽく輝いている。

真司もまた、俺のケージに近づいてきた。その顔には、どこか照れくさそうな笑みが浮かんでいる。


「モモスケ……あの、実はですね……」


真司が、言葉を詰まらせながら口を開いた。その様子に、俺は首を傾げる。なんだ? いったい何の話だ?


桃が、ふふっと笑って、真司の言葉を引き継いだ。


「モモスケ、結婚式の時、最後に私たちに言ってくれたでしょ? 『おめでとう』って」


俺は、桃の言葉に、ハッと息をのんだ。

……まさか。

確かに、俺はあの時、心の中で二人に祝福の言葉を贈った。だが、俺は喋らないインコだ。俺の声が、人間に届くはずがない。


真司が、俺の心の動揺を察したかのように、優しく語りかけた。


「あの時だけじゃないんです。モモスケは、時々……本当に、ごく稀にですが、ケージの中や、桃さんの肩の上で、寝言みたいに、色々なことを喋っていたんですよ」


「えっ……!?」


俺は、クチバシが完全に体から離れてしまいそうなほど、驚きに固まった。

寝言だと? 俺が?


桃は、俺の驚いた顔を見て、くすくすと笑った。


「そうよ、寝言でね。初めて聞いた時はびっくりしたんだけど、真司さんも聞いたことがあるって言うから……。私たち、モモスケの言葉に、いつも励まされていたんだからね」


桃の言葉に、真司も深く頷いた。


「モモスケの言葉に、何度救われたか……。俺たち、モモスケが喋れるって知ってたんですよ。でも、モモスケが自分から話したがらない理由があるんだろうと思って、ずっと黙っていたんです。だから、結婚式で、モモスケが自ら言葉を贈ってくれた時、本当に嬉しくて……」


真司の瞳は、温かい光に満ちていた。

俺は、信じられない思いで、桃と真司の顔を交互に見つめる。

まさか、俺の沈黙の誓いを、彼らが知っていたとは。

そして、俺が喋っていたことすら、俺自身が気づいていなかったとは。


「ありがとう、モモスケ! これからも、私たちのこと、見守っててね!」


桃が、満面の笑みで俺に語りかけた。

真司もまた、優しく微笑み、俺を見つめている。


俺は、二人の温かい視線を受けながら、心の中で、大きく息を吐いた。

この人間たちは、俺がひねくれインコであることを知りながら、俺の全てを受け入れてくれていた。

俺の沈黙の奥にあるものを、理解し、尊重してくれていたのだ。


俺のひねくれた純愛観察日記。

それは、二人の愛の物語だけではなかった。

それは、俺自身が、人間との間に、言葉を超えた深い絆を見つける物語でもあったのだ。

この奇跡のような真実に、俺のひねくれた心は、もはや一点の曇りもなく、温かい光に満たされていた。


俺は、ケージの中で、静かに、そして深く、頷いた。

これからも、この二人の傍らで、彼らの人生を、そして、俺自身の物語を、綴っていこう。



「ありがとう、桃。ありがとう、真司」



――数年後、画期的なゲームが「株式会社MOMO」から販売される。



その名は。


――『Echoes of Logos』――

まさか、俺が寝言で喋っていたとはな。しかも、桃と真司がそれを知っていて、黙っていてくれたとは。俺のひねくれた純愛観察日記は、彼らの愛だけでなく、俺と人間の間に生まれた絆の物語でもあったんだ。俺のインコ人生は、これからも彼らと共に続いていくぜ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ