《第三章》第二節:秘密の共有と、二人の帰り道
どうも、モモスケだ。真司の「守りたい」発言で、二人の関係は一変したぜ。帰り道、気まずいながらもどこか温かい空気が流れる中、桃が俺と健太の秘密を明かした。この秘密の共有が、二人の心の距離をどう縮めていくのか、俺はワクワクしながら見守ることにするぜ。
健太との一件以来、桃と真司の関係は、言葉にはならないものの、確実に変わった。資料館を出て、駅へと向かう帰り道。二人の間には、先ほどまでの気まずさとは違う、どこか穏やかで温かい空気が流れていた。俺は桃の肩の上で、その空気を胸いっぱいに吸い込む。
真司は、一歩引いて歩くのをやめ、桃の隣を歩くようになった。二人の肩が、時折、軽く触れ合う。そのたびに、桃は少しだけ身動ぎし、真司は耳を赤く染める。その一連の仕草が、俺には微笑ましくて仕方がない。
桃は、ふいに口を開いた。
「ねぇ、真司さん……」
真司は、桃の言葉を待つように、優しく彼女を見つめた。
「健太さんのこと……もしかして、知ってた?」
桃の問いに、真司は少しだけ驚いた表情を浮かべた。
「いえ、知らなかったです。ただ……」
真司は、少し言葉を詰まらせた後、ゆっくりと続けた。
「桃さんのことを、ああいう風に言うのは、嫌だったんです」
その言葉は、シンプルで、しかし、真司の真摯な気持ちが込められていた。桃は、その言葉に、またしても頬を赤く染めた。
「ありがとう、真司さん……」
桃はそう言って、照れくさそうに笑った。その顔は、先ほどまでの戸惑いは消え、心からの安堵と喜びに満ちていた。
そして、桃は、俺をそっと指差した。
「さっきの会話で気付いたと思うんだけど、健太さんって……モモスケの前の飼い主だったの」
桃の言葉に、真司は驚いたように俺を見た。俺は、その視線に、静かに瞬きを返す。
「そうだったんですね……。あの……すみません。気づかなくて」
真司は、まるで俺に謝るように、小さく頭を下げた。俺は、その態度に、彼という人間の誠実さを改めて感じた。彼は、俺という存在を、単なるペットではなく、桃にとって大切な存在として認識してくれている。
「大丈夫よ、モモスケ。真司さんは優しいから、きっと分かってくれると思ったの」
桃は、そう言って俺の頭を優しく撫でた。俺は、彼女の言葉に、胸の奥が温かくなるのを感じた。
俺が前の飼い主について、桃に語ることなどない。だが、桃は俺の様子から、何かを察してくれていたのだろう。この人間は、俺の沈黙の奥にあるものを、理解しようとしてくれている。その事実が、俺のひねくれた心を、少しだけ、いや、大きく揺さぶった。
二人は、その日から、ある一つの秘密を共有するようになった。真司は、俺が桃の前の飼い主と因縁があることを知った。そして桃は、真司がそのことを知っていることを知った。二人の間には、言葉を交わさずとも分かり合える、特別な絆が生まれたのだ。
帰り道、駅までのたった数分間が、二人にとっては、かけがえのない時間となったようだ。俺は、そんな二人の姿を見て、密かに笑みを浮かべた。
さて、この秘密の共有は、二人の関係を、さらにどう変えていくのだろうか。俺のひねくれた純愛観察日記は、新たな展開を迎える。
まさか桃が、俺の過去を真司に話すとはな。しかし、それが二人の間に、特別な絆を生んだようだ。互いの過去を共有し、より深い関係へと踏み出した二人。俺のひねくれたセンサーは、この先の展開をもう捉えているぜ。次節も、俺の観察は続く。




