《第三章》第一節:気まずい沈黙と、膨らむ期待
どうも、モモスケだ。真司が放ったあの「守りたい人」発言。おかげで二人の間は、甘くて気まずい空気に満ちているぜ。あの不器用な男が、ついに心の扉をこじ開けた瞬間を、俺は見届けた。さて、この一歩が、彼らの関係をどう動かすか、楽しみで仕方ない。
健太が去り、資料館に再び静寂が戻った。だが、その静寂は、先ほどまでの穏やかなものとは全く異なっていた。桃と真司の間には、真司が放った**「俺が守りたい人だ」**という言葉が、重く、そして甘く漂っていた。俺は桃の肩の上で、二人の間に流れるこの奇妙な空気を肌で感じていた。
桃の顔は、耳まで真っ赤に染まったままだ。彼女は、真司の言葉にどう反応していいのか分からないのか、視線を右往左左させている。真司もまた、先ほどの勢いはどこへやら、俯いたまま微動だにしなかった。彼の耳も首筋も、真っ赤に染まっている。普段は冷静沈着な真司が、こんなにも感情を露わにするとは。俺のひねくれた観察眼をもってしても、これは稀に見る光景だった。
しばらくの沈黙の後、桃が、蚊の鳴くような声で呟いた。
「し、真司さん……その、今のは……?」
真司は、ゆっくりと顔を上げた。その瞳は、まだ少し泳いでいたが、桃を真っ直ぐに見つめた。
「すみません、桃さん。つい、感情的になってしまって……」
彼はそう言って、頭を掻く。その仕草は、いつもの真司に戻っていた。だが、桃の心には、先ほどの言葉がしっかりと刻み込まれているのが、俺には分かった。彼女の視線が、真司から離れない。
桃は、真司の言葉を遮るように、小さく首を横に振った。
「ううん、違うの。そうじゃなくて……その、えっと……」
言葉を探す桃。彼女の頬は、熱を持っているようだった。
真司もまた、桃の反応に戸惑っている。彼は、自分の言葉が桃にどう響いたのか、不安げな表情を浮かべている。
俺は、このもどかしい状況をどうにかしてやろうか、と一瞬考えた。ここで「お前ら、早くくっつけよ」とでも喋ってやれば、一気に進展するかもしれない。だが、俺は喋らない。それは俺の矜持だ。それに、この「間」もまた、彼らにとっては必要な時間なのだろう。
二人の間に再び沈黙が訪れた。しかし、その沈黙は、もはや気まずいものではなかった。むしろ、何か新しいものが生まれようとしている予感に満ちていた。まるで、膨らんだ風船が、いつ破裂してもおかしくないような、そんな緊張感と期待感が混じり合っていた。
俺は、この静寂の中で、二人の心の距離が、少しずつ、確実に縮まっているのを感じていた。真司の、不器用ながらも真っ直ぐな感情。それを受け止めた桃の、戸惑いと、しかし確かに感じ取れる喜び。この二人の純愛は、健太という闖入者によって、かえって加速したようだ。
資料館の壁には、古いゲームのキャラクターたちが楽しそうに並んでいる。彼らもまた、この人間たちの恋の行方を、静かに見守っているかのようだ。俺のひねくれた純愛観察日記は、今、新たな章の幕開けを迎えた。次の展開が、楽しみで仕方がない。
真司のあの言葉、桃の心にしっかり響いたみたいだな。二人の間に漂う、新しい期待感。俺のひねくれた予想通り、健太の出現がかえって二人の恋を加速させたようだ。この純愛コメディー、いよいよ核心に迫ってきたぜ。次節も、俺の観察は続くぜ。




