表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カロの翼  作者: 三色団子
1/6

1

 とある村に翼の生えた少年が生まれました。名をカロといい、淡く光を纏う純白の小さな翼を背にもって誕生した少年のことは、すぐに村人たちの知るところとなりました。話を聞いた村人たちは居ても立ってもいられず、少年の姿を見に行き、本当だと分かるとさらに湧き立ちました。少年が生まれてから数日間は、連日連夜のお祭り騒ぎだったとのことを、少年は言葉が理解できる年になるより以前から、両親に言って聞かされました。


 なぜ村人たちが、これほどまでの熱狂ぶりを見せたのかと言いますと、それはやはり、村に古くから伝わる詩にあります。というのもそれはこんな詩でした。


 天におわすは御使い様の

 魂ちょいとはぐれてやってくる

 やや子に宿りし御霊の調べ、伏してあらわる帰路への翼

 それは純白はたまた天明

 大器そろえて万象を統べ、願いを背に受け翼を広げ、

 発ちつ飛びては天上昇り、背にした願いは祖のもとへ


 村ではその昔、同じように翼を持った少年が生まれました。村人たちははじめ、大層気味悪がっており、しかしどのような危険があるかも分かりませんので、陰でひそひそと、鳥の子や化け物などと言って遠巻きにしていました。少年の両親も同様で、触らぬ神に祟りなしとして、ろくに会話もしたがりません。少年は生まれた時から一人ぼっちだったのです。


 しかしながらその少年はすくすく育ち、成人が目前というところ、その村は天災に見舞われ、飢饉に陥り、伝染病で多くの人々が亡くなりました。村人たちは必死になって、毎日ところかまわずいつでも、ぶつくさと天に祈りを捧げました。その祈りを聞いていた少年は、どうにかして助けるすべはないだろうか、そんな気持ちになっていきました。少年は思いました。「この翼で天に昇り、神様に願いを届けることはできないものか」その思いに応えるように、それまで小さかった翼は見る見るうちに大きくなり、いつしか少年は飛べるようになっていたのです。


 少年は村人たちを集めて言いました。


「この翼に願いを託してくれ」


 村人たちはぽつりぽつり、しだいに声は大きくなってあれもこれも。少年はその言葉の一つ一つ、どれも余すことなく聞き、また全てを翼に宿して飛び発ちました。

 そうして、村は救われ今日までの平和が訪れている、ということを乳飲み子から老人まで、皆が知っていました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ